国内

貧困女子高生騒動 「相対的貧困」への無理解も原因

 NHK『ニュース7』の「子供の貧困」をテーマにした特集(8月18日放送)に登場した女子高生A子さん(17才)が、ネット上で“炎上”した騒動。経済的な余裕がないということでパソコンが買えないA子さんは、エアコンのない自宅の部屋で、母親が買ってくれた1000円のキーボードでブラインドタッチの練習をする──。そんなA子さんの貧困の現状が放送されると、ネット上では批判の嵐となる。

「アニメグッズが部屋にたくさんある」「2万円相当の高価なペンセットがある」などの意見が書き込まれたかと思えば、すぐさまA子さんのSNSが判明。過去のツイートを探り、「ランチに1000円使っている」「バンドのコンサートに行っている」などと、“貧困ではないのでは?”と炎上したのだ。

「食べるものがない」「住む場所がない」などすぐさま生命にかかわるような貧困は「絶対的貧困」と呼ばれる。一方で「相対的貧困」とは社会で標準的な生活を送れないことを指す。

 日本などの先進国では、この「相対的貧困」を貧困の指針としており、日本の場合、単身で年間122万円以下、2人世帯で173万円以下、4人世帯で244万円以下で生活している人を貧困状態にあるととらえられているが、その判断は難しい。今回の大炎上では、まさに社会の無理解があぶり出されたともいえる。子供の貧困を研究する長崎大学教育学部准教授、小西祐馬さんは次のように話す。

「餓死や売春などの絶対的貧困は一定の基準で把握されているのに対し、相対的貧困は国や文化、社会の発達状況によって違ってくるのでわかりにくいし、誤解されやすい。だから非常に見えにくい。しかしこれだけ、熱中症が騒がれるなか、エアコンがないというのはかなり厳しい状況だと判断できます」

 日本では、子供を貧困から救おうと、2014年に「子どもの貧国対策の推進に関する法律」が施行され、さまざまな取り組みがなされてきた。子供を支援するNPOができ、こども食堂も今や全国で300か所以上を数える。ただ子供の貧困といっても、小学生ら低年齢の子供と、高校生では貧困の見え方も違う。

「低年齢の子供には親の状況がダイレクトに出ます。親がお風呂に入れなければ子供は不潔な状態でいるし、服を着替えさせなければずっと同じ服を着ている。しかし高校生になればある程度子供自身が生活をコントロールできるようになります。また、本人も家族の状況が周囲にわからないようにと隠そうとするし、よほどのことがない限り人には相談しない。貧困が疑われても教師や友人がどこまで介入していいのかわからないので、手を貸しづらく、いっそう見えにくくなる」(小西さん)

 今回の炎上を「貧困たたき」だととらえ、抗議するデモを行ったグループ「AEQUITAS(エキタス)」の原田仁希さん(27才)は相対的貧困とは、「選択肢を奪われること」だと言う。

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン