愛之助:たとえば真田信繁の場合、しっかりしていて頭の回転がよく、テキパキ物事をこなしていく感じが、堺さんも普段こうなのかなと思わせますよね。
(山本)耕史くんは何でもできる方ですから、頭のいい石田三成はぴったりです。「馬鹿と喋るのは疲れる」なんて台詞は、本人も言っていたような気がしてきますから(笑い)。ムードメーカーで、面白いことを言って場を和ませてくれますし。そういう気遣いとか、冷静で頭がいいところは、三成に重なりますね。
――山本耕史さんとは、『新選組!! 土方歳三 最期の一日』でも共演していましたけど、今回のタッグはいかがですか?
愛之助:それ以来だったんです、耕史くんとは。懐かしいねって言いながらも、何年も会っていなかったのに、昨日まで会っていたという感じもしました。10年の間に、お互いに事情も変わっていて、いろんな話ができます。あの時と役柄の関係もよく似ていて、スッと入れる配役ですね。
――吉継の娘・春役の松岡茉優さんとは、お話をされましたか?
愛之助:はい。でも同じシーンはほとんどないんですよね。松岡さんが納豆大使になったということで、納豆をたくさん持ってきてくれたんです。耕史くんと「ここで食べると、におうよね」って話をして、持って帰りました(笑い)。
――関ヶ原の戦いで三成と吉継など、男の友情が描かれると思うのですが、見どころは?
愛之助:涙なしでは語れない、これまでとはまた違った男の友情の世界。2人はすごく熱いですよ。だけどその頃、ぼくは病で死にかかってる。元気であればガンガン行けるんですけど、息は絶え絶え、目も霞んで見えないわけです。その人物が戦場でも頑張るわけですから、苦しくもあり、演じがいのある役ですね。
――関ヶ原の戦いのシーンは、長くはないんですよね。
愛之助:はい。ロケがないまま関ヶ原が終わってしまうと聞いて、ショックでした。実は初めて、ドラマのために歌舞伎の舞台のお休みをいただいたんです。だから撮影が始まった瞬間から関ヶ原のロケが楽しみだったんですけど、まさかのロケなしでした(笑い)。
――今年の3月、関ヶ原にある吉継の墓参りをされていましたね。
愛之助:歌舞伎でもそうですけど、実在の人物を演じるときには、お墓参りに行っておきたいものなんです。逆に言うと、行かないと大変な目に遭うときもあります。
『四谷怪談』とか『累ヶ淵(かさねがふち)』とか、なにが起こるかわかりません。四谷怪談では顏が腫れた人がいて、お岩さんのお墓参りに行ったら急に治った。医者にも原因がわからないことって、本当にあるんですよ。そういう意味でも怖いです。でもやっぱり歴史上の方ですから、敬意を表して、プライベートで行ってきました。
――お墓の場所は、すぐにわかりましたか?
愛之助:迷うかなとドキドキしたんですけど、スマートフォンで調べたら、写真付きで「次はこっち」と丁寧に説明されていたので、ありがたいなと思いました。小雨が降る山の中を歩いて、無事に辿り着きました。
舗装されて歩きやすかったのですが、当時は大変だったんだろうなと思いました。そして、昔の人もこの空気を吸ったのかなとか、見晴らしのいいこの場所をどういう思いで見つめていたのかなとか、怖かったのかなとか、色んな事が頭を巡りました。
お墓参りをさせていただいて、ホッとしたというか、胸につかえていたものが下りたというか。これで務められるという思いでした。
――関ヶ原の戦いで、吉継が三成の西軍についたのはなぜか、歴史好きの間でよく話題になります。友情を選んだのか、西軍が勝つと思ったのか、なぜだと思いますか?