日本人の死因1位のがん。体のあちこちに「転移」してしまうケースもある。「もう手術はできない」となった時に、どのくらいの痛みや苦しみが待っているのか。「全身がんだらけ」の患者をさいなむ、痛みや苦しみへの恐怖の実態とは──。
そこで、「痛みの緩和ケアの技術も日々進歩していることを知ってもらいたい」と語るのはがん難民コーディネーターの藤野邦夫氏だ。
「一昔前のシーツを掻きむしって苦しむがん患者の姿は、いまはもう見なくなりました。医療麻薬には、『モルヒネ』『フェンタニル』『オキシコドン』の3つがあり、フェンタニルは新しい鎮痛剤で、モルヒネよりもはるかに効きます。
骨に転移したがんは痛みますが、放射線を出す『メタストロン』という注射を打てば1本で3か月から半年の鎮痛効果が持続します。がんの痛みがどの神経に関係しているか調べ、アルコールを入れて遮断する『神経遮断』という方法もあります」
治療で身体的な痛みが取れれば、残る懸念は、「死が近づく」という精神的な苦しみがどうなるのかだ。
3度のがん手術(大腸・肺・小腸&胃)を経験している元お笑いコンビ「ゆーとぴあ」のホープ氏(66)はこんな言い方をする。
「胃も切ってるし、肺も半分取ってるし、内臓はスカスカの状態です。手術後は生きる希望もなかったけど、眠れないときに看護師さんが来ると、それが希望になった。ありがたいと感謝することが増え、残り少ない人生をどうやって生きていくか考えるようになった」
病気を経験したことで、周囲から「人が変わった」と思われるようになり、人に対する見方も変わったという。