今になってはそれが伏線だったとわかるが、60年以上も出席を拒否してきた国会開会式にも、今年初めて共産党議員6人が出席し、陛下に頭を垂れた(※注)。
(※注)これまで欠席してきた理由について志位委員長は記者会見(2015年12月24日)で、(1)開会式が「主権在君」の形式、(2)天皇のお言葉のなかに政治的発言が含まれていたため憲法違反、の2点を挙げた。その上で(2)は「この三十数年来は、儀礼的・形式的」になり違憲ではないとし、出席を表明。同時に(1)は引き続き改革を求めるとし、改革実現のため開会式出席がより積極的な対応になると判断したと説明した。
理屈は何であれ、かつて打倒を主張していた皇室に対し、すり寄っていると言ってもいいだろう。ここまで態度を変えた理由は何か。西村眞悟元衆院議員が語る。
「共産党は、街頭デモと武装蜂起で革命を起こすという方針をとっくの昔に放棄していて、いまはあらゆる階級の民衆を取り込む戦略に変わっている。
しかし、天皇制廃止という方針を捨てたわけではない。『共産党は恐ろしい組織ではない』『昔と違う』と印象づけるために、皇室を利用していると見られても仕方ないでしょう。そのうち、国会開会式だけでなく、園遊会にも参加するのではないか」
共著に『日本共産党研究絶対に誤りを認めない政党』がある産経新聞政治部の酒井充氏も口を揃える。
「園遊会への出席は十分に考えられます。もう一つ注目すべきは、来年か再来年に開かれる党大会で、党綱領が大幅に改定され、皇室への姿勢も現在の延長線上で変化していく可能性がある。ただし、共産党の本質は変わっていません」
皇室に対し融和的になっているが、現行の党綱領の、《天皇の制度は憲法上の制度であり、その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきものである》という箇所は、表現がソフトになる可能性はあるが、根本は変わらなさそうである。
※SAPIO2016年10月号