──下顎呼吸はあと数時間で旅立つサイン。落ちついてお別れの覚悟をなさってください
緩和ケアの専門医である長尾クリニック院長の長尾和宏氏が言う。
「亡くなる当日になると、肩を上下させる努力様呼吸になります。そしていよいよ最期の時が近づくと、下顎を上下させる下顎呼吸に移行します。いわゆる“最期の呼吸”です。この時、すでに意識はなく白目を剥いていて、痛みも感じません」
こうなると死は間近だ。間もなく呼吸が止まり、脈も止まる。自宅で穏やかな死を迎えさせてあげたいのなら、それを落ち着いて見守ることが家族の務めだという。
──意識がなくなってもあなたの声は届いています。ずっと話しかけてください
前出の柴田氏は、死が訪れるまで声をかけ続けることが大切だと話す。
「その時まで“今までありがとう”や“よく頑張ったね”などの声かけや、家族の思い出を語り続けてください。すると、逝く直前のご家族の表情が穏やかになったり、中には笑みを漏らしたケースなどを私は実際に目にしてきました。人間の五感のうち聴覚は最後まで残るので、自分たちの声は“届いている”と思ってください」
手足を優しくマッサージしたり、好きだった音楽をかけるなどして、家族との最後の時間を楽しもう。薄れていく意識の中、家族の最後の声が泣き叫びや怒鳴り声だとしたら、あなたはどう感じるだろうか。
※週刊ポスト2016年10月7日号