オバマ大統領の8年が静かに幕を下ろそうとしている。イラク戦争で迷走したブッシュ政権後の難しい舵取りを、オバマ政権は「チェンジ」の掛け声のもと乗り切ろうとした。結果はどうだったか。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が、オバマ氏の成果について語る。
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米国のバラク・オバマ大統領は「チェンジ(変化)」を訴えて、2008年11月の選挙で勝利した。それから8年を経て、「オバマには何も出来なかった」というような否定的評価が主流のようだが、それは少し違うと思う。
オバマ大統領が追求したのは、唯一の超大国である米国の地位を保全することだった。しかし、米国はその地位を維持するための潜在力をほぼ使い尽くしている。オバマにできることは、最初から「マイナスのミニマム化」に過ぎなかったと見るならば、所与の条件下ではそれなりの成果を出せたと思う。
第1は、南スーダンの独立だ。2011年7月9日にスーダン共和国の南部10州が独立し、南スーダン共和国が成立した。この国は、米国が背後で画策して作り上げた傀儡国家である。
1974年に南スーダンで油田が発見された。その後、この油田はかなり有望であることが明らかになった。そこに目をつけたのが中国だ。中国石油天然ガス集団(CNPC)と中国石油化工(シノペック)の国有石油大手2社を通じ、南スーダンの油田地帯に本格的に出資し、開発を進めたが、米国の傀儡国家である南スーダンが独立したので、中国が同地の石油を自由に処分することができなくなってしまった。
南スーダンでは現在も、政府軍と反政府ゲリラの内紛が続いているが、油田は米国の影響下に置かれているといっていい。南スーダンを建国することで、米国は中国のアフリカ進出に大きなブレーキをかけることができた。