「花子はずっと忙しくしていて、母親の役目ができないことがいちばんつらかったんだと思います。入院した嫁はんに『誰がこんな体にしたんや!』と言われて…。大失敗ですよね。それまで、ぼくは人生に自信を持っていたんです。でも、自分の夢のために嫁はんを犠牲にしてしまったんじゃないか、もっと早く花子の変化に気がつければ、と後悔しました」
「あの時こうしていれば」「もっと早く気がつけば」いちばん近くにいる家族だからこそ、そんな気持ちを抱え込んでしまう。
前出の花子は胃の5分の1を取る手術を受け、約3か月間、入院生活を送った。花子は「病名は知らされていないが術後は不安で仕方なかった」と話す。
「母親と看護師が“転移が…”とひそひそ話しているのも聞いていたし、うすうすは感じていました。もしかしてがん…? そんなことばかり思っていたし、手術後の痛みもあって、肉体的にも精神的にもまいっていました」
不安に追い詰められ、病室を訪れた大助にこんなことを言ったこともある。
「私、別れてもええ。こんな体の弱いやつ、嫌やろ。いつ別れてもええ。もう看病せんでもええで」
そんな花子に大助は、これまでにない大声で怒鳴った。
「あほか~っ! 見損なうな。嫁のひとりぐらい病気になったからいうて、それで負けるような、捨てて逃げるような、弱い男と違うぞ!」
そして大助はこう続けた。
「心配すな。絶対元気になる。がんばらなあかん。本人が負けてどないするんや」
このときの大助の言葉が、退院してからもずっと、花子の支えとなった。
※女性セブン2016年10月27日号