世の中の腹立つ事象を、女性セブンのアラ還名物記者“オバ記者”こと野原広子がぶった斬る! 今回は、取扱説明書に怒りをぶつけます。
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2年前のこと。家電量販店で、4万円弱でデジカメを買った。選んだ理由は、古くからのカメラメーカーで、姿形がよかったから。そのデジカメで、ひどい目にあったの。原因は取扱説明書、通称“トリセツ”。
その昔、私はトリセツを読むの、好きだったのよ。へえ、こんなこともできるのかと、ページをめくる楽しさといったらないもの。でも、機械が複雑になるにつれ、トリセツもよくわからなくなって、いつの間にか敬遠。
てか、昨今のスマホやパソコンは、トリセツは最初から付いてなくて本体の中にあって、購入後、機器を始動させて、画面上に出てくる説明画像を見ながら操作するんだってね。でも、そこまでたどり着けないんだよ。
パソコンオンチの私のモットーは“触らぬ機能にたたりなし”。30年前にワープロとして使い始めたときからロクな目にあってない。ちょっと指が滑ったからって即、動かなくなるってどういうこと?
パソコンがイヤなのはそれだけじゃない。何かといえば横文字がしゃしゃり出てきて、「ほ~れ、わかるかな?」と小バカにされているよう。
それでも、1文字でも違ったら先に行きません、という生真面目な精密機器と思うから下手に出ていたけど、“フリーズしたら、とりあえずコンセントを引っこ抜いて入れ直す”という手を知ってから、なんだかねぇ。
ならば、パソコンに大きな不具合が出たらどうするか。女友達に聞くと、「パソコン好きな男友達を持つのよ」だって。女子力まで動員するって、こんなふしだらな機械があるかいっ!
そんな日頃のうっぷんがあってか、件のデジカメのトリセツはとても感じよく見えた。冒頭の「電源を入れ、初期設定をする」は、写真つきでスイスイ。次の項目が「かんたんに使う」で、「モードダイヤルをPにする」という指示。
「そうよ、これで充分なのよ」と、その通りにして、翌日は知人の個展の初日へいざ。カメラを持参したのは私だけで、集合写真を何枚か写し、会場を出たところで、写真を確認。そしたら、いやもう、ビックリしたなんてもんじゃないね。
画面が上下で分かれた鏡絵だったり、全体がちぎり絵のようだったりで、1枚もまともに写っていないんだもの。
どうやら私は、押してはならないボタンを押したらしいわ。「Pモード」が悪かったのか…原因はよくわからないけど、ほかのモードならミスタッチをしても画面がグチャグチャにはならなかったのか…。ともあれ、トリセツで最初に注意しとくべきじゃない?
とはいえ、天下の○社。「壊した画面を元に戻す方法は?」と直接聞けば、知恵を授けてくれると信じて受話器を取り上げたわけ。
甘かったね。「調べます」とさんざん待たせたあげく、「申し訳ありません。そういう機能ですから」とこうよ。
さすがに、このデジカメはあっけなく廃盤にしたけど、消すに消せない口惜しさよ。デジカメとトリセツの話が出れば、この話、必ずしてるわ。
※女性セブン2016年11月3日号