みんな、その多くは、沸きあがるものに突き動かされ、誰かにその気持ちを伝えたくて書いているのである。その気持ちが素直であればあるほど、アマゾンでは「役に立ったお客様」の人数表示が増えるし、読書メーターだと「ナイス!」の数字が大きくなる。

 この夏に自分が企画・編集した『国のために死ねるか』(伊藤祐靖著・文春新書)が出て以来、ほとんど毎日、アマゾンレビューや書評サイトの書きこみをチェックしているのだが、たとえば読書メーターで何百もの「ナイス!」を集めているレビューは、こんなふうに率直だ。

<……恥ずかしながらフィリピン人の兵士の方の話し方がハルヒっぽいなとか全く違うことを考えていた私がいた。そして日本の掟を捨てて外国からの掟になったのをどう取り戻すのかを考えていないという問いかけに著者同様私も考えこんだ。>(miteiさんのレビューから部分引用)

 ハルヒっていうのは大ヒットライトノベルの主人公「涼宮ハルヒ」のことなんだろう。私は『涼宮ハルヒの憂鬱』を読んだことがないのだが、どうやら非日常的でぶっとんだ女子高校生らしい。たしかに『国のために~』に出てくるフィリピン人で海洋民族のラレインも、まわりの人間とはまったく異質なぶっとびキャラだ。この喩えは、ウケ狙いではなく、ほんとうにハルヒが頭に浮かんだのだろう。miteiさんはそれをそのまま綴り、それに共感した読者が他に何百人もいた。

 もし学校が児童や生徒に読書感想文を課すのなら、このくらいなんでもアリにしてほしい。もちろん、「ナイス!」がいっぱいもらえるように書こう、ではなく、みんなは素通りするけれど、俺は私はこう思ったと堂々と書き連ねた文章でもいい。玉石混交、長短太細、種々雑多。感想文はダイバーシティでなければならない。

 読書の秋は、芸術の秋でもあり、スポーツの秋でもある。みんな違ってみんないいというか、いまいちなのも大量に書かれ、すごいのが頂上の一角に少しだけ見つかる。それが厚みのある文化というものだ。

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン