愛知県常滑市で中部電力の特例子会社、中電ウイングで印刷職に就く都築弘さん(36才)は、生まれつき両腕をもたずに生まれた。原因は不明。
物心ついたころからクルマが大好きで、早く大人になって免許を取って車を買う、と決めていた。両腕がないことがそんなに大きな問題だと思わなかったという。ホンダの運転補助装置「フランツシステム」に、出合ったのは14年ほど前。
「免許を取るにはどうすればいいかを聞きに、福祉車両普及促進のイベントに行き、フランツシステム搭載の『シビック』を見たんです。すぐに免許を取りに行きましたね」
いわゆる自操車は、架装(装備)部分はオーダーメード。運転する人の身体の状況などに合わせ、注文があってから作り始める。
ステアリングはペダルで操作。ペダルに固定された靴をはき、自転車のペダルをこぐように回せばハンドルが回る。そのほか膝など、フランツシステムは脚だけを使って運転する。
「初めて自分のクルマに乗ったときは、風が気持ちよかったですねえ。それまでは、誰かに乗せてもらうばかりで肩身の狭い思いもしましたが、ようやくこれで、人のクルマに乗せてもらう必要はなくなった…と、うれしかったです」
妻の寛子さん(36才)との間には長女・樹(4才)ちゃんがいる。寛子さんは「彼の運転はとても快適で、すぐにウトウトしちゃうんですよね(笑い)」
「クルマは“自由”なんですよ。夜中でも早朝でも思い立ったら出発できる。北海道など遠方だって、運転が大好きだから苦にならない。とにかく自分にとってはなくてはならないものですね」(都築さん)
※女性セブン2016年11月3日号