「確かに外の人から見れば、自分たちの頑張りが足りなかったから、予選通過ができなかったと。それは否定できません。自分たちの頑張りが足りなかったからこそ、こうやってあと1つのところで、(本戦出場を)逃してしまったと、自分たちでもわかっています」
もはや、舟津に涙はない。
「走る姿を見て頂いた通り、本当に変わってきたと思います。自分が1年生主将で、本当に悔しく思った先輩もいると思います。でもこうやってついてきてくれて、全員で走れたということは、これから自分の人生や先輩の人生にとっても大事になってきます。逆にここでの敗北を忘れてしまうと、人間としても、選手としても、成長できません。自分たちは、この日のことを忘れるわけには行きません! 忘れるつもりもありません!」
一瞬の沈黙。
「これからまた、新しい時代が始まりますが、ぜひ、変わらぬ応援をよろしくお願い致します」
舟津が話し終わると万雷の拍手に包まれた。“不甲斐ない”というOBたちの空気は“来年が楽しみだ”に変わっていた。
企業に置き換えれば大正時代から続く老舗企業の業績不振会見という炎上必至の状況で、逆風を追い風に変えてみせたようなものだ。
■PROFILE/西本武司:1971年福岡県生まれ。メタボ対策のランニング中に近所を走る箱根ランナーに衝撃を受け、箱根駅伝にハマる。そのうちに、同じような箱根中毒の人々とウェブメディア「駅伝ニュース」を立ち上げる。本業はコンテンツプロデューサー。ツイッターアカウント名は「公園橋博士」、相棒は「マニアさん」(アカウント名「EKIDEN_MANIA」)
撮影■EKIDEN NEWS
※週刊ポスト2016年11月4日号