50代で2人に1人、70代で5人に4人がかかるといわれる白内障。現代社会では誰しもに発症の可能性がある目の疾患だ。彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長の平松類さんが解説する。
「白内障は、目の中でカメラのレンズのようにピントを合わせる働きをする水晶体が白く濁り、見えにくくなる病気です。発症すると、ものが二重に見えたり、視力が低下したりします。紫外線や食生活の偏りが影響しているといわれますが、基本的には年を取れば誰でもかかる病気です」(平松さん)
年を取るにつれて近くのものが見えづらくなる老眼との違いは、遠くも見えづらくなることだ。
「信号待ちをしていて、目の前の信号機だけでなく、道の向こう側にいる人の顔まで見えなくなったら白内障を疑いましょう。老眼は眼鏡で矯正できますが、白内障は眼鏡をかけても見えるようになりません」(平松さん)
眼科で白内障と診断された場合、最初に点眼薬を処方されることがある。だが点眼薬は治療にはならない。クイーンズ・アイクリニック理事長の荒井宏幸さんが解説する。
「白内障に対して処方する目薬は、白内障の進行を予防するものですが、効果としては限定的だと思います。白内障の治療は手術が基本ですから。しかし、目薬を差すことは決して悪いことではありません。その目薬をもらうため数か月に1回、眼科に訪れて検査を受けるので、白内障の経過を見るだけではなく、他の病気を発見しやすいというメリットもあるんです」(荒井さん)
荒井さんの言うように、白内障の唯一の治療法は手術である。濁った水晶体を除去し、人工のレンズと入れ替える。
最近は「5分で手術が終わる」「日帰りで受けられる」などと謳っている病院も多い。しかし、眼球の中に人工レンズを入れる手術と聞けば、そんなに簡単に決断できるものではないだろう。
白内障手術の名医として知られる、筑波大学医学医療系眼科教授の大鹿哲郎さんは、「心配いりません」と手術に太鼓判を押す。
「医療技術が進歩しており、いまは安心して手術を受けられます。手術は年間120万件以上行われており、麻酔で痛みもなく10~20分程度で終わります。白内障が原因であれば、術後はほぼ必ず視力回復します」(大鹿さん)
しかし、どんな手術も100%安全とはいいきれない。一定のリスクがあることを理解しておくべきだと指摘するのは平松さんだ。
「術後に2~3mmの傷口からばい菌が入って、感染症になるリスクが0.2%ほどあり、最悪の場合は失明することもあります。出血して目が赤くなったり、ドライアイや乱視になる可能性もある。白内障はリスクの少ない手術だからと甘く考えてはいけません」(平松さん)
※女性セブン2016年11月10日号