都心の超高層ホテルの50階。フロアのそこかしこにSPの姿があり、漂う緊張感はハンパじゃない。それはいうまでもなく、世界的なVIPが滞在しているからだ。
ところが当のVIPは、スキップを踏むような軽快さで登場。ラフなチェックのシャツにジーンズ姿で、「JJです。はじめまして」と、気さくな笑顔で手を差し出した。えっ? この人が、世界的な大ヒットSFシリーズのプロデューサーなの!?
2009年より『スター・トレック』シリーズで監督をつとめ、昨年に大ヒットした映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』では、ジョージ・ルーカス監督からのご指名で、監督・製作、さらに脚本の執筆も担当したJJこと、J.J.エイブラムスは、映画界の若き巨匠だ。公開中の映画『スター・トレック BEYOND』では、製作を担当している。今や、世界中のエンタメ界で、最も必要な人、といっても過言ではない。そんな彼が映画と出合ったのは、1977年のことだ。
◆宇宙は楽しい遊び場
「ぼくが10才のとき、『スター・ウォーズ』(ジョージ・ルーカス監督)の第1作が公開されて、それを見て虜になったんです。しかも、その同じ年に、『未知との遭遇』(スティーヴン・スピルバーグ監督)も公開され、ぼくはこの2作を見て、完全に宇宙映画に心を捕えられてしまったんです(笑い)。それからは、夜空を見上げて、“今、ルーク・スカイウォーカーは何をしているんだろう”とか、“この世界に生きているのは人間だけじゃない、地球上の生物だけじゃないんだ”ということを考えざるを得なかった。
『スター・トレック』は、ぼくが生まれた年に始まっているんですね。だから、これを見ていたぼくの周りやファンの人は、ぼくよりずっと前に宇宙について考えていたと思いますが、ぼくの宇宙観は、この2作品をきっかけに始まったといえます。
そして、宇宙というのは、ありとあらゆる可能性を秘めている場所だって確信したんです。宇宙は希望であり、楽観すべきところであり、そして楽しい遊び場なんだ、って」
と、いかにも楽しそうに、身振り手振りを交えながら語る。
10才にして、魂を揺さぶられる作品と出合ったなんて、なんと鋭い感受性だろう。しかも今ではその作品を生み出したルーカス、スピルバーグという二大巨匠に認められ、後継者ともいわれる存在になったのだからすごい。
実は10才の頃、友達と映画祭に出品した作品で、ちょっとした注目を浴びたJJは、LAタイムズで紹介される。しかも、その記事を読んだスピルバーグ監督からホームビデオの修復を頼まれたという逸話が残っている。
「大好きな映画づくりにかかわることができたぼくは、奇跡に近いといってもいいほどの幸運に恵まれていると思っています」
話しているうちに、自らの幸運を再認識したようで、「とってもありがたくて、クレージーラッキー、超々ラッキーだね(笑い)」と、声が弾んだ。
撮影■森浩司
※女性セブン2016年11月17日号