アイドルとして活動していた経験があるBさん(22歳)は、「もともとアイドルは苦手なジャンルだった」と話していました。
「昔から目立ちたい気持ちがあって、自分がアイドルになってから、勉強のためにアイドルを見るようになりました。今ではSNSに好きなアイドルのリストを作って、毎日投稿をチェックし、イベントにも足を運んでいます」
彼女の場合は自身のアイドル経験が、アイドルファンとしての趣向に大きく影響していました。それは、アイドルにつきものの「卒業」や「引退」への姿勢に強くあらわれています。
「自分がアイドルを辞めてしまったからこそ、アイドルを続けてくれていることだけで最高。好きなアイドルが売れていくことは、もちろん嬉しくてたまらないですが、引退したとしても、結婚や出産など、女の子として幸せになることを心の底から応援できます。そこは男性のファンとは少し違うかもしれません。普通の女の子が、普通の女の子より努力しているところをたくさん見てきたので、私はアイドルを応援し続けています」
女性のファンにとって、アイドルの女の子は感情移入できる対象であると同時に、切磋琢磨できる存在でもあることが伝わってきました。
私も地下アイドルですが、感情移入と切磋琢磨する対象としてアイドルのファンになる、という感覚があまりわかっていませんでした。そのため先日、ファンの女の子から、「たまちゃんのライブの日は、可愛い格好で行かなきゃ!」と言われて驚きました。どんな格好でも遊びに来てくれるだけで嬉しいけどなあと思った後に、私が舞台に上がるために衣装を着ているから、彼女もお洒落しようとしてくれていることに気が付きました。
私も期待に添いたくて、ライブ当日はなるべく女の子が好きそうな衣装を着たのですが、終演後に、「靴すり減ってるよ! 大丈夫?」と、まったく気づいていなかったことを指摘されて、再び驚きました。女の子の視点は、男性とはまた全然違うなあと思います。切磋琢磨し甲斐のないアイドルでごめんね……と反省するとともに、こちらも背筋が伸びたのです。
●ひめの・たま/地下アイドルでライター。1993年2月12日、下北沢生まれ。生きるのが苦手な人へ向けて活動している地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を軸足に置きながら、文筆業も営む。そのほか司会、DJとしても活動。著作『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー社)。11月23日にアルバム『First Order』全国発売決定。