◆え、100万円もかかるの?
「急増の背景にあるのは都市部への人口流入です。地方で暮らしていた高齢者が、息子や娘の暮らす都心に近い介護施設に入所したりすると、田舎の墓の手入れができなくなる。“都心で暮らす子供に継いでもらうのは申し訳ない”“手入れできないお墓をそのまま残しておくわけにいかない”といった悩みを抱える人が増えているのです」(全国紙経済部記者)
2014年11月に「お仏壇のはせがわ」が行なった意識調査では、墓に関する心配事のトップは、「継承者がいない(32%)」ことで、「お墓の手入れが行き届かない(24%)」がそれに続いた。
そうした意識が墓じまいのニーズに繋がる一方、関連トラブルも増えている。最も大きいのが費用面の問題だ。首都圏の寺院関係者が明かす。
「墓を撤去する際に難航するのが菩提寺との交渉です。骨壺を移動する場合、移転元の管理者(寺院など)に埋蔵証明書を出してもらう必要がありますが、発行する条件として数十万~数百万円という高額な『離檀料』を要求され、トラブルに発展するケースも少なくありません。
特に檀家側が護持会費の支払いを怠っていたり、相談なく別の寺院の住職に法要を頼んでしまったりした過去があると、寺院側と感情的なしこりがあって交渉がこじれやすい」
さらに、移転にあたってはもともとあった墓石を撤去し、更地にして管理者に返す必要がある。その費用もバカにならない。
「撤去作業をするのは石材店ですが、安くやってくれるところを選ぼうにも、住職が“この石材店しか墓地には入れない”などと通告をしてくる場合がある。住職が、墓地を開発する時に出資してくれた石材店に対して、独占的に仕事を回す約束をしていたりするのです。そうなると墓石の撤去、整地、洗骨、遺骨の配送なども含めて60万~80万円くらいかかってしまうこともある」(同前)
墓じまいの経験者などほとんどいないので、相場もわからない。結果として離檀料や撤去費用を「言い値」で払わざるを得ない構図があるのだ。
※週刊ポスト2016年11月25日号