「管理料を滞納されているお墓の場合もあります。滞納5年で無縁墓かどうかの調査に入り、継ぐかたが見つからなければ、法的手続きを踏んだのち、1年から3年程度で無縁塚に改葬します」と担当者が説明してくれた。
東京都公園協会のホームページによると、一般埋蔵施設の年間管理料は1平方メートルにつき610円。わずかな額を意識的に滞納する人がいるのかと首をかしげるが、お墓とかかわりたくないのか。書類を識別できなくなった高齢者も含まれているのかもしれない。
◆青山霊園にお墓を持ちたいんです
「改葬」とは何か。お墓の本にはお墓の引っ越しと説明されているが、正確には「遺骨」を移転させること、つまり遺骨の引っ越しである。墓石全体を移転させるのではなく、墓石の下部に設置された「カロート」という場所に埋葬されている遺骨だけを取り出して運ぶことを指すらしい。都立霊園では、個別に規定の骨壷に入れ直し、八柱霊園(千葉県松戸市)にある無縁塚に運ぶそうだ(多磨霊園にも無縁塚があるが、すでに満杯とのこと)。その数は?
「8か所の都立霊園(青山、雑司ケ谷、谷中、染井、八柱、八王子、多磨、小平)で平成23年から平成27年の5年間で、合計約1100件の“無縁改葬”が行われました」(東京都公園協会霊園課の担当者)
都立霊園に眠る人の数は121万人だそうだから、わずかといえばわずかだ。しかし、5年間で約1100件ということは、単純計算すると、1年に約220件だ。つまり、2日に1件以上。
空き地になっているか所は、こうした無縁改葬の区画に加え「返還(お墓を取り除き、使用していた区画を整地して東京都公園協会に返すこと)」された区画だそうだ。返還の場合、当然、お墓の中の遺骨も動かされる。これが“改葬”だが、お墓はそのままで、カロートの中の何人分かの遺骨だけ改葬されるケースもある。少しややこしいが、返還は区画単位、改葬は遺骨単位。2015年度の返還数は約800件、改葬数は約3000件だったという。
毎年7月に都立霊園の新たな使用者が公募されて話題を呼ぶが、霊園の面積が増えるわけではない。無縁改葬されて空いた墓所区画、あるいは返還された墓所区画の跡地の「再貸付」なのだ。広かった区画は6平方メートル以下に分割されて再貸付される。