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オバマとトランプ 握手に見る力関係と腹の内

 まずは握手で心理的優位に立ったが、会見へのマイナス感情やストレスが大きかったのも大統領の方だ。握手している間中、トランプ氏の左手はリラックス。だがオバマ大統領の左手には力が入り、指がしっかり開かれていた。歯をくいしばって、強い苦しみや辛い感情に耐えていると、身体の他の部分にも力が入るもの。大統領として自分の感情を抑えつけていたのだろう。

 さて、とりあえず主導権を握ったものの、退任は間近。その先までは力が及ばないし、信用できない、というところなのだろう。

 最後の外遊先となったリマのアジア太平洋経済協力会議(APEC)。その記者会見で大統領は、トランプ氏の選挙公約への憤りや不満からか唇を噛むと、間をあけ、言葉を選ぶように公約が実現されるかどうかはわからない旨を発言した。

 唇を噛み、間をあけることで、次に言おうとしている言葉が重要であることを、見ている者に印象付けた。そして眉間にしわを寄せると、さらに声を低めて注意を引きつけ、「トランプ氏が現実に直面すれば、多くの問題に対し適応を迫られると確信している」と、トランプ氏をけん制するようなメッセージを述べた。

 だが、破天荒な次期大統領は、もしかすると多くの問題を解決に導くかもしれない。そんな期待と不安が入り混じった気持ちが、交錯したのだろう。大統領は右の耳たぶを触った。これから口にすることへのマイナス感情を、柔らかい耳たぶを触って和らげたのだ。

 いつもは身体を揺らすことなくまっすぐ立ち、冷静と落ち着きをアピールする大統領が、右へ左へ身体の重心をずらして肩を揺らしながら、対外政策や安全保障、雇用など、問題が簡単で単純であったなら、これまでの大統領にもできていたはずと発言し、演台に右ひじをついたのだ。

 そこには、これまでの大統領同様、自分も問題解決できなかった、という本音が垣間見えていた。だけど、そんな本音を露わにすることなく演台に右ひじをつくことでガードし、大統領としてのプライドも支えたのだろう。

 退任後も、トランプ氏の政策が米国の民主主義から外れれば、異議を唱えていくと述べたオバマ大統領。果たして、「自由だ」と手を羽ばたかせて、大声で叫べる日はいつになるのだろうか。

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