◆「唾液」が大事になる

 一方、歯科医の側からも糖尿病と歯周病の関係を指摘する声が上がり始めている。『歯をみがいてはいけない』の著書がある、竹屋町森歯科クリニック院長で歯科医の森昭医師が話す。

「糖尿病患者や予備軍の方の症状のひとつに“出血しやすくなる”というものがあります。そのため、糖尿病の方で歯周病を併発している場合は、歯茎からの出血が悪化し、細菌が血管に流入しやすくなってしまいます」

 また、糖尿病の前兆として「口腔内が乾く」という症状があるが、それは唾液の分泌が少なくなることで引き起こされる。歯周病治療には「唾液の分泌」を促す口内のマッサージもあり、糖尿病の症状改善に一役買っているのだという。森医師が続ける。

「唾液には歯の汚れを洗い流す働きだけでなく、人体の傷を修復する機能も備わっている。ですから、私は歯周病治療の一環として、口の中をマッサージして唾液の分泌を促す処置をしてきました。

 歯周病菌の力を弱めるとともに、口の中の傷を治して、細菌が血管に入り込むのを防ぐ効果があります。患者さんからも血糖値が改善したという声が上がってきています」

 歯科医の側も経験的に糖尿病との関係を感じ取っていたのだ。さらに唾液の減少は味覚障害を引き起し、それが糖尿病の原因にもなる。

「味覚障害は偏食を引き起こしたり、味の濃いものばかり食べるようになったりすることが多く、それが血糖値を上げやすくする」(同前)

 歯周病は「人類史上最も感染者の多い感染症」としてギネスブックにも認定されているほどで、日本国内だけでも約8000万人もの患者がいるといわれる。

「歯周病の予防と治療で重要なのは、専門家による口腔内のクリーニングです。細菌の塊ともいえる歯垢や歯石を除去し、歯磨き方法の改善指導などを受けて、口の衛生状態を整えてください。もっと歯周病と糖尿病の関係の認知度を上げて、糖尿病専門医と歯科医が連携する道を探っていきたい」(同前)

 糖尿病と歯周病、2つの病気に思い当たる節がある人は、まずは歯医者に行ってみることが改善の第一歩になるかもしれない。

※週刊ポスト2016年12月9日号

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