いまフィギュアスケートは、アニメも熱い! 男子フィギュアスケート・アニメ「ユーリ!!! on ICE(ユーリ・オン・アイス)」のテレビ放送および動画配信が始まり、アニメの中でもグランプリシリーズが開幕、ファイナルを控え選手たちがしのぎを削っているのだ。「久保ミツロウ×山本沙代=原案、山本沙代=監督、アニメーション制作=MAPPA」という豪華布陣がおくるこのアニメは、日本のみならず、世界のフィギュアスケートファンやアニメファンを虜にしている。Blu-ray&DVDの発売が決定し、さらに盛り上がりを見せそうな「ユーリ!!! on ICE」。誕生の経緯や制作秘話を、プロデューサーを務めるMAPPA代表・大塚学氏に伺った。
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■フィギュアスケートができるんじゃないか、というほど動きを理解しています
──「ユーリ!!! on ICE」のテレビ放送(テレビ朝日他)は第10滑走(第10話)を迎え、主人公の勝生勇利(かつき・ゆうり)が、グランプリシリーズに臨んでいます。制作はいかがでしょうか?
大塚:このアニメは本当に特殊で難易度が高く、試行錯誤しながら今も作っています。何が難しいかというと、第一にフィギュアスケートを絵で描くのが未経験であること、第二にそれをテレビシリーズのスケジュールでやっていくということ、です。技術的な効率を模索しながら、圧倒的な物量に立ち向かわなければならないのです。
まずフィギュアスケートは、動きで評価されるスポーツですから、実際の動きをできるだけ忠実に再現しなければいけません。ルッツジャンプのときは、アウトエッジにのって跳ぶとか、着地の仕方はこうだよ、フリーレッグはこうなっているよとか。そこは山本監督も久保さんも、情熱をもってしっかりと表現をしたいと言っているところなので、絵を描くアニメーターも研究を重ねました。中心になって描いているアニメーターたちは、もはやフィギュアスケートができるんじゃないか、というほど動きを理解しています。もちろん、体がついていくことはないので実際には無理ですが(笑)。ずっと机で作業してますからね。
──勇利をはじめとする各選手が競技で使用している曲も振付もオリジナル。数々の有名選手の振付で知られる宮本賢二さんが振付を監修され、DEAN FUJIOKAさんがオープニングテーマを担当されるなど、このアニメは本格的かつ豪華です。
大塚:こだわりが細部にわたるぶん、普通のアニメ作品の3倍くらい大変です。もともとは、山本監督と久保さんとの間で、構想されていた企画でした。お二人とも筋金入りのフィギュアスケートファンですから(笑)。一方、僕は、冬になるとテレビを見て「真央ちゃん頑張れ!」というレベルでしたが、山本監督からユーリのお話をいただいた時、その情熱と久保さんの素敵なビジュアルに引き寄せられる形で、制作をお引き受けしたんです。
──山本監督と久保さん、制作会社であるMAPPAさんの役割分担はどのようになっていますか?
大塚:ストーリーは監督と久保さん二人の共同作業です。MAPPAは進行を含めた管理を行いながら、絵を作る作業をしています。二人のイメージを形にするために、僕らは必死にくらいついているという感じですね。二人のフィギュアスケートへの情熱が現場にも浸透していて、苦労はしていますが、いい雰囲気は維持できていると思います。
──漫画家の久保ミツロウさんは、選手たちのイラストをツイートされたり、オリジナル横断幕を持って観戦に訪れるなど、フィギュアスケートファンであることは広く知られていました。そうしたお二人が考えるストーリーを見たい、という思いも、フィギュアスケートファンにはあるような気がします。
大塚:こういう選手を見たいとか、こんな選手にこんなことをしてほしいとか、この作品はお二人の妄想からほとんど作られているんです。面白いエンタテインメントを視聴者に送り出そうという意識も持っていますが、それだけではなく、本当に自分たちが見たいものを、監督と久保さんは集中して作れているなと感じます。だからこそ、ファンの方々の心を強引に一本釣りするようなネタが生まれてくるんだと。それはこの作品の強みであると思っています。