一の湯にとって低価格路線への転向は賭けでもあった。プライスポイントを下げれば客数が必ず増え、採算は後からついてくるとの仮説をもとに踏み切った。
その読み通り次第に稼働がよくなると資金繰りも楽になり、さまざまな経費管理で営業利益を確保できるようになった。そうしたビジネス手法はスーパーマーケットやフードサービス業など異業種のチェーンストアオペレーションからも学んだと小川氏はいう。
一の湯グループの成功は温泉旅館の低価格ブームを巻き起こし、旧来の施設にエッセンスを注入するチェーンが相次いだ。とりわけ独自コンセプトの温泉観光ホテルで、関東圏の在住者に馴染み深いといえば、千葉県で展開されている「ホテル三日月スパリゾート」や静岡県伊東市の「ハトヤ」といった施設だろう。
ホテル三日月の中でも木更津にある「龍宮城スパホテル三日月」は同グループの旗艦施設だ。東京湾アクアラインを利用すれば都心から約40分でアクセス可能という立地をはじめ、大規模な温浴施設、縁日広場、ダンシングウォーターショーといったエンターテインメントも人気。
一方、昭和ノスタルジーも魅力というリピーターも多いのが「ハトヤ」。シーサイドに建つ「サンハトヤ」では、ディナーショーや海底温泉、水槽を長めながら入浴できるお魚風呂などアイディアが光るサービスが人気だ。いずれも概ね1万円台前半からリザーブ可能。
関西で知られる有名施設には「大江戸温泉物語 箕面観光ホテル」がある。全国で約30施設を運営する大江戸温泉物語グループの旗艦施設でもある。こちらも有名観光ホテルが大江戸温泉物語の手により運営されている。
とにかく建物から設備、サービスまでスケール感の大きさが圧巻。バラエティに富んだ客室や充実した施設、各種エンターテインメントやクオリティの高いバイキング料理など、常識を打ち破る仕掛けに驚く。
大江戸温泉物語グループでは1泊2食7980円が基本だ。同グループの関東圏における代表的施設が「大江戸温泉物語 ホテルニュー塩原」。昔からの有名な温泉観光ホテルだったところ大江戸温泉物語の運営で再生、年間約23万人が来館、1日平均630人がチェックインするほどの人気だ。