「海外では大麻治療の効果があったとみられる症例が出ていて、小児がんのお子さんを持つ親御さんから『早く日本でも使えるように解禁してほしい』という切実な声も聞いています。もし有効利用できるのなら、研究を進めるべきじゃないかと思っています」
実際に、日本で大麻を使った治療を試みた人もいる。医療大麻の解禁を訴えている「NPO法人医療大麻を考える会」の会員である山本正光氏だ。2015年12月に大麻取締法違反で逮捕されているが、同会代表の前田耕一氏はこう話す。
「山本正光さんは末期の肝臓がんでした。抗がん剤治療やモルヒネの投与で効果が出ず、大麻を自宅で栽培し、使用して逮捕されました。裁判では『がんが小さくなり、苦痛も減り、食欲も出た。自分の命を救うために大麻を所持したことがどうして罪になるのか』と訴えましたが、結審前の今年7月に亡くなりました」
しかし、「医療用」の大麻解禁を主張していても、実際は“違う使い方”をしていた例が後を絶たない。高樹被告と一緒に逮捕された森山繁成被告は「大麻草検証委員会」(2013年9月に解散)の元代表で、やはり医療用大麻解禁のための活動をしていたが、大麻所持を認め、部屋からは吸引パイプも見つかっている。
結局のところ、“解禁論”のなかには、娯楽用の大麻も認めるように求める声が実態としてある。米コロラド州などでは娯楽用としてのマリファナが合法化されていることが背景にある。
「嗜好品としての大麻解禁を訴える人たちの理屈として出てくるのが、有毒性の低さです。1994年に米国国立薬物乱用研究所のジャック・ヘニングフィールド博士が出した調査結果によると、マリファナの依存性などの毒性は、アルコールやニコチンよりも低く、“解禁論者”がよく引き合いに出します。
『酒の飲み過ぎで死ぬ人はいても、大麻の吸い過ぎで死ぬ人はいない』『反社会勢力の資金源となっている現状よりは、合法化して適切に管理したほうがいい』というのも常套句です」(大手紙社会部記者)
※週刊ポスト2016年12月16日号