「税は国家なり」という。税制の設計次第で国の経済活動や社会の形まで変わるからだが、この国の役人たちはアテにしていた消費税増税が再延期されると、“ならばどんな口実で国民から税を巻き上げるか”と狡知をめぐらせ、あの手この手を打ち出してきた。こんな矛盾だらけの屁理屈、国民は納得できるはずがない。
●エコカー増税「売れすぎて税が取れないから減税対象を削減」
日本は世界に冠たる「自動車重税国家」だ。なにしろ車を走らせるには前述の自動車取得税に加え、自動車税、重量税、ガソリン税など9種類の税金があり、車両価格180万円の車に3年間乗ると53万円の税金を払わなければならないと試算されている。
車の税負担はドイツの3倍、フランスの13倍、アメリカの30倍にのぼる。そんな日本で車を買おうとする時の“心強い味方”がエコカー減税だった。
「温暖化対策」を目的に導入され、低燃費の車種を購入すると自動車重量税や取得税が最高20万円以上減免される。減税対象のエコカーへの買い換えが進めば、環境問題の解決につながるというロジックだった。
ところが、財務省は来年4月から減税対象車種を大幅に減らすと言い出した。「エコカーばかり売れすぎて重量税の税収が4割、取得税は6割も減った」という理由だ。
すでにエコカーを買った人も、減税対象から外れる車種であれば、次の車検の時に高い重量税を払わなければならない。税理士でもある浦野広明・立正大学法学部客員教授がいう。
「エコカー減税の目的は二酸化炭素排出量を減らすこと。エコカーが売れて税収が減るのは本来の目的にかなっているのに、それを理由に増税するのは本末転倒、アベコベ増税です」