そうした人たちは、不要な降圧剤にカネを支払っていることになる。高血圧治療に取り組む坂東ハートクリニック院長の坂東正章医師はこういう。

「私もよく使用するカルシウム拮抗剤は、新薬で1錠50円、血管を収縮させるホルモンに作用するARBで120円程度。現在50歳の人がこれらの薬をやめられた場合、男性の平均寿命(80歳)で試算すると50万~100万円にもなります」

 適切に降圧剤を使用するメリットはあるが、一方で無視できないのが副作用である。動悸やふらつき、勃起不全など数あるなかでも恐ろしいのが「脳卒中」だ。車を運転中に発作を起こしたというAさん(74)はこう語る。

「ARBを5年近く服用しており、時折めまいや頭痛を感じることはありました。ところが、孫を迎えに車を運転している時、左半身が麻痺した感覚に襲われ、視野も急に狭くなったんです。意識も薄れていき、気づいたときにはガードレールにぶつかっていました。幸い事故では軽傷でしたが、脳梗塞寸前の一過性脳虚血発作と診断されました」

 大櫛氏が続ける。

「私が行なった6年間の追跡調査では、高血圧患者同士で比較した場合、降圧剤を使わない人よりも降圧剤を使う人の方が死亡率が高いという結果が出た。心筋梗塞や脳卒中の原因とされる高血圧ですが、降圧剤により脳卒中などで死亡率が上がっては本末転倒です」

 高血圧予防には、健康的な食生活と適度な運動が必要不可欠。もし高血圧気味でも、自宅で定期的に血圧を測定し、血圧が安定しているなら、自分から医師に減薬を持ちかけてみる。そうすることで初めて“降圧剤依存”から解放される光明が見えてくるのだ。

※週刊ポスト2016年12月16日号

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