しかし、編集能力については疑問符がつく。事情はよく分かる。ここ数年、ネットメディア立ち上げブームがありつつも、編集者が足りないのである。編集経験がないというのに、IT系企業に入社したら突然メディアが増えたので「お前、編集長やれ」などと言われ、突如としてそのメディアの責任者にさせられてしまうのだ。

 当然、著作権と肖像権の概念も教えられていないし、「引用」の要件も知らないし、そもそも言葉遣いも知らないし校閲者もいない。薬機法や差別用語の知識もない。ミスをしたら記事を削除すれば済むと考えている。こんな姿勢の編集者が低価格で記事を量産すべく、「クラウドソーシング」というネット上でのお仕事募集サイトで50~1000円程度で記事を発注する。

 この仕事に応募するライターも、プロとして仕事をしてきたわけでもない場合が多い。クラウドソーシングは、デザイナーやイラストレーターのように一定の技術がすでにある人を雇うには良いシステムだが、ライターは別である。誰でも文章は書けるだけに、最低限の修業・技術習得さえしていない。

 もはや「編集」「ライター」の仕事は、「未経験歓迎」「誰でもできる簡単なお仕事です」に成り下がった、いや進化したといえよう。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。

※週刊ポスト2016年12月23日号

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