◆査定はどうなってんだ!
本誌11月4日号で大谷の来季年俸について「6億円でも安い」と語っていた野球評論家・江本孟紀氏はこんな言い方をする。
「冷静に査定していくと、2億7000万円あたりが妥当という考え方もあるのかもしれない。今季の大谷は“二刀流”といっても規定投球回にも規定打席にも達しなかった。それが二刀流の難しさ。投手に専念して25勝、あるいは打者一本で40本塁打、打率.380といった数字でタイトルを取っていれば、年俸は間違いなく倍に増えたでしょう」
とはいえ、契約更改では球団側が選手の全試合、あらゆるプレーを厳密に数値化して査定ポイントを割り出す。タイトル獲得以外にチームへの貢献度などもプラス査定の要素となり、「大谷の場合はソフトバンクとの天王山での快投や日本シリーズでのサヨナラ打、ベストナインで史上初の2部門(投手、DH)受賞など、プラス要素を挙げたらキリがない」(担当記者)という活躍だったのに、35%アップに留まるのはやはり“謎”である。
「投手・大谷」の成績をダルビッシュの5年目(25試合登板、16勝4敗、1.88)と比較すると、21試合登板、10勝4敗、防御率1.86と確かにやや見劣りする。しかし、「打者・大谷」は、323打数104安打、打率・322、22本塁打、67打点の大活躍。ダルビッシュの8打数1安打とは当然、比べ物にならない。「規定」という物差しだけで計ることへの違和感が消えない。
しかも、今回の2億7000万円という数字からは、球団内での“微妙なバランス調整”の痕跡が読み取れる。
大谷の契約更改の4日前、日ハムの主砲で打点王に輝いた中田翔(27)が、3500万円アップの2億8000万円でサインした。前出・平松氏がいう。
「栗山監督がいつもいっているように、今の日ハムは中田のチーム。大谷が先に3億円を超えたりしたら、中田はソッポを向くだろうし、大谷もやりづらくなる。大谷が2億7000万円で笑顔でサインしてくれれば、すべてが丸く収まる。今回の額は、そういう数字です」
ギリギリのところでチーム最高年俸にならない上に、「同時期のダルと同じ額」という“言い訳”まで成り立つ。あまりにもキリがよすぎる数字なのだ。それだけに、前出・野崎氏はこんなことをいう。
「球団が選手に対して、“会見で発表する額は低めにしてくれ”と指示する場合があります。他の選手の更改への影響などを考えてそうするのです。今回も色々な可能性が考えられる。“大谷がこのくらいなら自分も我慢するか”という選手がいるでしょうからね」
実際、大谷が会見で自らはっきりと金額を口にしたことについて、「普通は記者の問いかけに応じるなかで“推定額”が導き出されていくのに……年俸がいくらかはっきりさせたい事情があったのでは」(スポーツ紙デスク)と訝る声もある。
そんな話が出回るほど、“安すぎ”の印象は強い。
撮影■山崎力夫
※週刊ポスト2016年12月23日号