治療は全身麻酔で行なわれる。経直腸超音波を見ながら前立腺がんに向けて、20センチほどの針を3~4本刺し、アルゴンガスを注入する。マイナス20℃でがん細胞が破壊されるため、氷の大きさを確認しながら実施する。凍結により、細胞内外の浸透圧が変化し、一層破壊が進み細胞が死滅する。1回の凍結では破壊の程度が弱く、急速凍結後にヘリウムガスで急速解凍、再度急速凍結を3回繰り返す。

「前立腺の近くには、直腸と尿道があり、これらを凍らせると合併症のリスクがあります。そこで直腸近くに温度センサーの針を刺し、温度が下がりすぎないように監視しながら凍結します。また、尿道にはカテーテルを挿入し、常に温水を還流させて凍らないように確認しながら治療するのが重要です」(三木医師)

 治療効果は、前立腺腫瘍マーカーのPSA値の変化で判定する。臨床試験後1年経過した5人のPSA値は、ほぼゼロに近いところまで低下し、排尿に関する指標も悪化していない。男性機能に関しては、若干の低下がみられた。

 近々、放射線治療後の再発がんに関する凍結治療の自費での診療が開始される。また、初期の小さいがんは現在、経過観察か全摘手術、あるいは放射線治療しか治療の選択肢がない。それらに対する新しい治療としても、導入が期待されている。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2016年12月23日号

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