東京・神保町に、往年のAVファンが足繁く通う“性地”「芳賀書店」がある。かつては「ビニ本」の殿堂といわれた同店。出版事業に乗り出した時期もあり、寺山修司の『書を捨てよ、町へ出よう』の版元として一躍有名になった。
いまも多くのアダルトDVDや書籍の販売を行なう。1階から3階まで全てアダルトだが、フロア毎に趣は異なる。1階はソフトなDVD、2階はSMなどハードな作品。3階はコミックや書籍やイメージDVDがメインだ。ネット全盛のなか、さぞ苦戦しているのではと思いきや、専務の芳賀英紀氏はこう話す。
「30代後半から50代が中心ですが、上は80代まで幅広いお客様にご来店いただいています。DVDは昔のVHSより値段が安いので、客数や商品の購買数は上がってきています」
数年前、ネット販売や動画配信のみに絞った大手メーカーが途端に売り上げを落とし、担当者が謝りにきたことがあったという。芳賀書店が「実店舗あってのAV」を証明した恰好だが、何が人々をアダルトショップに向かわせるのか。
「ネット配信との最大の違いは、実物を手に取って選べること。『パッケージならネットでも見られる』と思うかもしれませんが、実物は違う。ハードユーザーなら、パッケージを見ただけで、作品の熱量や仕上がりが分かります」(同前)
店内には女優の顔と名前が書かれたPOP(ポップ)を置くなど好みの作品を探しやすいよう工夫がなされている。照明も落ち着いた暖色系にして、居心地の良い空間作りを心がけている。
売り上げの柱は何か。
「売り上げの4割近くを支えているのは『熟女モノ』です。お客様の高年齢化と、母性を求める男性が増えていることが理由だと見ています。ニーズに合わせて、特設コーナーも作っている。性癖も時代によって変遷します。我々は、どんな性癖も絶対に否定しません。芳賀書店は男性が素直になれる店が目標です」(同前)
世の男性たちは「ネットを捨てよ、町へ出よう」。そして、自分好みのAVを買いに行こう。
※週刊ポスト2016年12月23日号