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中国公安省次官がインターポールトップ選出で懸念の声も

インターポールのトップに中国人が選出された

 中国公安省の次官がこのほど、インドネシア・バリ島で開催された国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の年次総会で、新たな総裁として選出された。中国人がICPOのトップに就任するのは、中国が1984年に加盟して以来初めてとなる。任期は4年間。

 中国ではいま、習近平国家主席の肝いりで反腐敗運動が大々的に展開され、海外に逃亡した汚職官僚らを追及する「キツネ狩り作戦」にも力点が置かれている。そんなことから、国際人権団体からは「中国は自国の国外逃亡犯の逮捕のためにICPOを使おうとしてきた経緯がある」として、懸念する声も出ている。

 この公安省次官は孟宏偉氏で、1953年11月、中国東北部の黒竜江省生まれの63歳。北京大学法律学科卒業後、中国公安省入り。現在は同省次官のほか、中国の公海の維持・保衛を主要任務とする国家海洋局副局長と中国海警局長、それにICPO中国国家センター局長を兼務する同省生え抜きのエリート。

 孟氏は就任のあいさつで、「世界の治安は現在、第2次世界大戦以来もっとも深刻な状況だ。国際的な警察協力へ貢献を続ける一方で、現状に合わせて刷新もすべきだ」と述べ、テロ組織の壊滅などを目標にすることを明らかにした。

 2017年の総会も中国で開かれるが、今回の総会では、ICPO非加盟の台湾がオブザーバー参加を認められなかった。これについては、中国が蔡英文台湾指導部に圧力をかけるべく台湾の参加に反対した経緯が取りざたされており、早くも来年も台湾の参加は困難との観測が広がっている。

 さらに、中国の反腐敗運動に伴う「キツネ狩り」作戦や反体制活動を活発化している少数民族の国内外の反体制組織摘発のために、ICPOが利用されるとの懸念も出ている。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの中国研究員、ウィリアム・ニー氏はAFP通信に対して、「われわれは、中国が新疆ウイグル自治区の独立を目指しているウイグル人の反体制派の摘発を目的として、ICPOのシステムを悪用したと思われる過去の事例を調査したことがある。今後ICPOトップが中国公安省出身者であることから、中国の反体制派摘発のために、ICPOが利用される事例が多くなることを懸念している」と指摘している。

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