芸能

小向美奈子 「人間の陶酔も汚さもトルストイから学んだ」

「私って意外と読書家」という小向美奈子

 新聞・雑誌がこぞって書評特集を組む時期だが、世の中には意外な読書家たちがいる。平凡とは真逆の人生を歩むアウトローの人々は刑務所の中で、ある人は趣味の延長で、人生を変えるような本に出会っていた。元グラビアアイドルで現・ストリッパーでAV女優の小向美奈子氏(12月30日まで横浜ロック座に出演中)が感銘を受けた「愛読書」はいったいどんな本なのか。

「私って意外と読書家で、ハマると読むよ。年間3冊は読んでるね。服役中は『ハリー・ポッター』シリーズを読み漁ったよ」(小向氏・以下「」内同)

 小向氏はそう大真面目に語る。グラドルデビューした10代の頃にロシアの巨匠トルストイの内省的評論『人生論』(岩波文庫/700円ほか)に出会い、「人間」が見える作品に引き込まれていった。

「それぞれが拠り所にするものがあり、何かに陶酔しないと生きづらいことを、『人生論』で学んだの。確かに神様が一番という人がいれば、恋愛や酒やセックスに溺れる人もいる。トルストイはタメになるなと思い、続けて読んだのが『アンナ・カレーニナ』(岩波書店/上中下各960円ほか)。人間の汚い面がこれでもかと記されていて、人の心の中を覗き見たようで衝撃的だった。

 主人公のアンナは不倫して家族を失うなど波乱万丈だけど、私も実生活で、“アンナだったらこの男の人好きになるかな”と考えるようになった。だって私も破滅的な恋もしちゃうから自己投影してるんだ(笑い)」

 2015年に覚せい剤取締法違反で逮捕され、懲役1年6月の実刑となった小向氏。2016年夏まで服役した栃木刑務所では読書に明け暮れた。

「女子大生の処女がサディストの富豪と契約を結んでSMする小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(E・L・ジェイムズ・著/ハヤカワ文庫NV/600円)はドMの私と重なる部分があった。様々な描写を“作者が実際に試したのかな”と想像しながら読むと面白かった」

※週刊ポスト2017年1月1・6日号

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