「いかにもありそう」というリアル感は、アーティストやお笑い芸人のヒットからもうかがえました。アルバム収録曲「MUSIC VIDEO」の動画が多くの再生回数を記録した岡崎体育さんはその一人。歩きながらカメラ目線で歌っていると、横からメンバーが登場してカメラを手で塞ぐと次の背景が変わる──みたいなシーンは、思わず「ある、ある」と言ってしまいました。
お笑いグループ「ロバート」の秋山竜次さんが架空の最新鋭クリエーターに扮する「クリエーターズ・ファイル」も多くの共感を得ました。トータル・ウエディング・プロデューサーとかスローフード・アドバイザーなど、いかにも実在していそうな人の特徴を見事に捉えていましたよね。
よりリアルで本物志向の傾向はまだあります。小規模な醸造所で職人がこだわりをもって造るクラフトビールが流行ったり、ドローンを駆使したリアルな空撮がNHK-BSの「山女日記」で使われて話題を呼んだりしたのもそうです。
メイドインジャパンのクオリティの高さが、インバウンド需要も相まってきちんと評価される現象はあちこちで見受けられます。
最後に、私が2017年に注目しているヒット商品のキーワードをお話します。それはモノの「所有からシェアへ」です。こだわりの商品に注目が集まる一方で、モノを持つ、揃えることよりも、「良い物をできるだけ少なくして快適に暮らしたい」という欲求があるのも事実。それがシェアやリユース等に繋がっています。
例えばカーシェアのサービスなどは広まっていますし、断捨離という意味では、フリマアプリ「メルカリ」の月間流通が100億円を超えているのもそう。また、大塚家具が高級家具を下取りしてリユース事業を本格化したり、最近では倉庫会社に預けたモノが自由に出し入れでき、不要になったらネットオークションで売れるようなサービスも盛況です。
消費のサイクルをきちんと回し、手放すところまで考えたモノの持ち方が広まっているといえるでしょう。このような消費構造にうまく入り込んだサービスや商品は今後ますますヒットすると思います。
●撮影/山崎力夫