《「職業に貴賎なし」と発言している人がいた。私はそんな言葉を聞いたことがない》
《「手向ける(たむける)」という漢字は読み書きができないどころか、その言葉すら知らない》

 四則計算がわからない、36行目を表す「l36」の意味がわからない、そもそも答案の解説を見ても理解できない…。

 ちなみに桜井さんの妻は、「渋滞」という漢字を「けいたい」と読んでおり、「渋滞5km」という道路上の表示は携帯電話の電波域だと思っていたと同書で明かされている。

 同僚との飲み会を全て断り、たばこをやめ、テレビも禁止して、桜井さんは死にものぐるいで小学5年生の勉強をやり直した。娘が解く前日に同じ問題を予習し、当日娘と一緒に解き、自ら解説する。平均睡眠時間3時間という地獄の日々の始まりである。

「大変な毎日で、終盤はうつ病にも悩まされて精神安定剤が手放せなかった。でも不思議なもので、やっていくうちに“勉強ができない子の頭の仕組み”がわかってくるんです。頭の良し悪しではなく、やり方が悪い。この状況で、物量的な勉強法は意味がないな、とか。理科や算数はすごろくにしたりお風呂で考えたり、歴史や地理は地名や偉人の名前をCDで覚えたり、日常に近い形で一緒に学んでいきました。自分がまっさらな状態だからこそ、娘がなぜわからないのかが理解できた。『親塾』のメリットはここにありました」(桜井さん)

 膨大な計算ドリルを反復し、漢字ドリルで語彙力を高め、過去問を徹底分析して過ごした600日。一切の反抗もせず父親についてきた娘は、試験前日、全ての単元の勉強を終えると、机の上に突っ伏した。しばらくして顔を上げ、桜井さんを見つめながらこう言ったという。

「結構、楽しかったね!」

 父娘で歩んだ受験戦争の結末はドラマと著書に譲るとして、今改めて、桜井さんは「意義深い中学受験だった」と振り返る。

「小学校の娘を深夜まで勉強させるなんて虐待だという人もいます。でも、私は全くそう思いません。娘の表情が証明しています。自分で何かを掴み、自分の力で達成した喜びを噛みしめる、あのキラキラした顔。今までどんなオモチャを買い与えても、あんな顔をしたことはなかった。

 生まれて生きるだけなら親はいらない。付加価値を付けることで自己肯定感を持たせたかったんです。ぼくは自己肯定をしたことがなく、“どうせ無理だ”とばかり思ってきた。そんなぼくの娘が、“私、やるじゃん!“と自信を持ってくれた。これこそが、親から子への教育なのだと思います」(桜井さん)

 娘は現在、超有名私立の高校1年生。数多の友人に恵まれ、「校内一の貧乏人」と自ら笑いを取りながら、一生に一度の青春を駆け抜けている。

※女性セブン2017年2月2日号

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