「子宮頸がんを引き起こすパピローマウイルス(HPV)や悪性リンパ腫の原因となるエプスタイン.バールウイルスなどが存在します。また、血液のがんである白血病の一種にはHTLV-1(ヒト細胞白血球ウイルス)への感染によって引き起こされるものがある。
ウイルス感染が原因である以上、ワクチンによる予防が実現する可能性があり、研究が進められています。HPVの感染を防ぐ子宮頸がんワクチンはすでに製品化されています。HPVワクチンは、接種後に健康被害を訴える事例が相次いだことから国は現在、積極勧奨を中止していますが、肝臓がんの原因となるB型肝炎ウイルスについては、ワクチン接種によってがんの発症リスクを下げる取り組みが進められている」
B型肝炎ウイルスに感染して慢性肝炎になると肝硬変や肝臓がんへと進行する。ワクチンでB型肝炎を予防すれば、肝臓がんリスクが下げられるという理屈だ。
日本では昨年4月以降に生まれた0歳児全員を対象に、無料で定期予防接種が始まった。それ以前に生まれた子供は「任意」接種だが、WHOは1992年に「すべての出生児にB型肝炎ワクチンを接種すること」を推奨し、2009年までに世界177か国で定期予防接種が始まっている。
このワクチン接種は成人にも有効と考えられている。川崎医科大学の尾内一信・小児科教授がこう語る。
「B型肝炎のなかでも近年増えているのが、欧米から入ってきたジェノタイプAのウイルスに起因するもので、このタイプは持続型で肝臓がんを引き起こしやすい。ワクチンが有効だと分かっていますので、中高年で肝臓がんのリスクを減らしたい人は接種すべきだといえます」
HPVワクチンのように接種後の健康被害が報告される製品がある一方、がん予防への貢献が認められるワクチンも存在するのだ。
※週刊ポスト2017年2月3日号