会議や打ち合わせも、パソコンやスマホでスカイプやフェイスタイムなどのソフトを使えば、どれだけ離れた場所にいても、お互いに顔を見ながらリアルタイムで話し合うことができる。さらに最近は、リアルタイムで参加できなかったら後でその映像を見てキャッチアップすることもできるため、その場にいる必然性も少なくなっている。
在宅勤務を選ぶかどうかは本人の問題である。在宅勤務が嫌なら育休を取ればよいし、育休を取ってから在宅勤務をするという選択肢もある。これから労働力人口が減少し続ける日本では、給与全額支給の育休や在宅勤務の制度とシステムを整備することが急務であり、おのずとその方向に進まざるを得ないが、私は育休という概念よりも在宅勤務という概念のほうが、何事もスムーズに運ぶのではないかと思う。
安倍晋三首相は「1億総活躍社会」の実現に向けた「働き方改革」として「同一労働同一賃金」「非正規という言葉をこの国から一掃する」と叫んでいるが、そういう概念は私には理解不能だ。仕事の質や成果、地域差に関係なく「同一労働同一賃金」と言われたら企業は賃金が安い国に出て行くしかないので、国内雇用が減るだけである。「雇用創出」どころか「雇用喪失」「雇用消失」につながる愚策だ。
本当に1億総活躍社会を目指すなら、育休や在宅勤務の拡充を推し進めると同時に、正規であれ非正規であれ「同一生産性同一賃金」にすべきである。
現在、日本企業の間接業務の生産性はアメリカ企業の半分ほどでしかない。もし、その程度の「働き方改革」ができないようであれば、日本企業はますます衰退するしかないだろう。
※週刊ポスト2017年2月3日号