国際情報

鎌田實医師、モスル奪還攻撃で追い詰められる命を救いたい

JIM-NET代表も務める医師の鎌田實氏

 最近はめっきり報道されることが少なくなったが、IS(イスラム国)による世界の混乱は、いまも続いている。シリアやイラク、クルド自治区への医療支援をしているJIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)代表もつとめている鎌田實医師が、クルド自治区の難民キャンプを支援のために訪れたときの体験を報告する。

 * * *
 クルド自治区であるアルビルは、イラクのなかでも比較的治安がいい。だが、3か月前、モスルを過激派組織ISから奪還するための攻撃が始まってから、アルビルにも混乱の波が押し寄せている。

 モスルは、2014年からISに支配されていた。かつては人口150万人が暮らすイラク第二の都市だった。そこを奪還するため、イラク政府軍とクルド自治政府軍、シーア派民兵、アメリカを中心にした有志連合の空爆が一体となって攻撃し、じわじわとISを追い詰めている。それに伴い、モスルから避難してきた人たちがアルビルにもあふれているのだ。

 ぼくは2016年の年末、難民キャンプや病気の子どもたちの支援のため、アルビルを訪ねた。

 ぼくが代表をしているJIM-NETが支援してきたがん専門病院のナナカリ病院にも、モスルから来た小児がんや白血病の子どもたちが続々と集まっていた。患者数が40%も増え、病院のキャパを超えた。病室に行くと、ベッドが足りず、子どもがベンチに座らされていたりする。日本ではとても考えられない光景が目の前に広がっていた。

 薬も足りていない。イラクでは基本的な医療費は無料だが、病院に薬がない場合は、家族が町で薬を調達しないとならない。抗がん剤は高価であり、品薄で手に入らないものもある。薬がないと、当然、まっとうな治療はできない。せっかくモスルから逃れてきたのに、どうすることもできない。

「生きた心地がしない」と、避難民たちが口々に言うモスルでの生活はどんなだったのか。モスルから来た患者家族に話を聞くことができた。

 ある小児がんの子どもは、モスルでは有名なイブンアシール病院で治療を受けていた。ISに制圧されたばかりのころは、そこそこの治療を受けることができたが、次第に薬の供給が滞るようになった。抗がん剤の多剤併用療法をしたくても、すべての抗がん剤がそろわない。モスルにとどまったドクターたちが少ない薬で、必死に治療を続けてくれたという。

関連記事

トピックス

米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
埼玉では歩かずに立ち止まることを義務づける条例まで施行されたエスカレーター…トラブルが起きやすい事情とは(時事通信フォト)
万博で再燃の「エスカレーター片側空け」問題から何を学ぶか
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン