揃って犬好きだという真矢ミキさん夫婦。今回は、3年前、夫の誕生日にサプライズで迎えたミニチュアシュナイザーへの愛を綴る。
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「メルオさん…」
ふとつぶやくだけで、心の中に淡いピンク色の春が広がるよう…長いマツゲに縁取られたつぶらな瞳。小柄だけど思いのほか筋肉質で。時折私は…彼の胸板に顔を埋める。
そう、この香り…今日も日向のにおいがする。彼はメルオさん。
…と、いきなり愛を語ってますが、メルオさん(正式名メルシー)は、わが家の大切な家族、黒のミニチュアシュナウザーの男の子でございます。
彼は3年前、夫の誕生日にわが家にやってきました。なぜなら私たち夫婦の共通点の一つに“犬好き”があったから。
ヨーロッパの留学経験が少しある夫は、ヨーロッパに多いテリア系のウェスティーや『アーティスト』という映画で見事な演技を披露したジャックラッセルテリア、そしてシュナウザーのような、手足がもう少し太く逞しく、ガシガシ生きているような犬が好きで飼いたいらしい。
そんな以前していた会話を引っ張り出しながら、私は夫の誕生日サプライズを企てた。
誕生日の半年前からこっそりブリーダーさんを訪ね、極秘の中で私は黒の赤ちゃんシュナウザーと出会えた。そして、その子を家族に受け入れることをひとりで決めた。かわいい盛りの2か月の大きさの頃も我慢の2文字で家には連れて帰らず、私は面会に留めた。そして、ただただ夫の誕生日を待ったのだ。
シュナウザーも“なぜ連れて帰らない?”と言わんばかりに毎度、首を傾げだした。私と黒シュナのはじめての共同作業、それは隠密計画。私は生まれて2か月のシュナウザーを相棒に、その計画を遂行した。
そんなこんなで3か月。やっとこさやって来た夫の誕生日当日、大喜びする様子を収めようとスマホのカメラをかまえ、リビングにさり気なくその子犬を座らせ準備万端となった。
ハラハラ、ワクワクの連続で3か月分の待ち遠しかった重みからも解放され胸弾む瞬間だった。
夫の「ただいま」という声でドッキリ+モニタリングみたいな番組がわが家の台所で始まった気がした。しかしその矢先、“うわーどうしたの、この子っ!?”と歓喜の叫びが上がると思いきや、「うそでしょ、うそでしょ…」と言いながらどんどん夫が後ずさっていくではないか!?
なにか違う。私の想像とナニカガチガウ! 期待していた反応から明らかに遠ざかり逆走していく夫。スマホも一応、後ずさる彼を追う。