ビジネス

【法律相談】年金支払い拒否で資産の差し押さえはあるか?

年金の支払いを拒否するとどうなるのか

 国民年金への加入は国民の義務とされているが、信用度に不安を抱き、保険料を納付していない人は少なくない。年金保険料の支払いを拒否していると、資産を差し押さえられたりすることもあるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 自営業です。私は年金制度に疑問を持ち、一度も支払ったことがありません。老後は国に頼らず貯金で賄いたいと思っています。しかし、知人の話だと、年金を払わない場合、年金機構が強制的に資産を差し押さえにくるというのです。支払いを拒否していると、本当に差し押さえされてしまうのでしょうか。

【回答】
 国民年金法では、厚生年金の被保険者や、その配偶者以外で20歳以上60歳未満の者を被保険者として、保険料を納める義務があるとされています。従って自営業者はもちろん、就職していない学生でも、原則として国民年金の保険料を支払う義務があります。

 また、同法では国民年金の保険料の徴収手続きについて「この法律に別段の規定があるものを除くほか、国税徴収の例によつて徴収する」と定めています。

 その96条で滞納者がいれば、厚労大臣がまず、期限を指定して支払いを求める督促状を送り、指定の期限までに保険料を納付しないときは、国税滞納処分の例による滞納処分を課したり、滞納者の居住地や財産所在地の市町村に対し、滞納処分をするよう請求することができるとしています。

 さらに国民年金法では、年金機構に対して、これらの手続きを行なわせることにしています。国税徴収法は、税金滞納者からの税金を取り立てる手続きを定めた法律ですが、その滞納処分の方法は年金保険や健康保険の保険料の滞納者にも適用されます。

 具体的には、滞納者の預貯金や不動産を差し押さえる手続きです。滞納処分として金融機関は滞納者に対する貸し付けがあって相殺する必要があるような場合以外は、処分をした役所に支払います。不動産の差し押さえがあると、当該不動産は公売に付されて換価され、その代金から税金や保険料が徴収されます。つまり、滞納処分ができる年金機構が保険料滞納者の預貯金を差し押さえすることは可能です。

 ただし、国民年金法102条では、国民年金の保険料を徴収する権利は2年で消滅時効することとされています。なので、2年を経過した保険料は滞納処分の対象となりません。

【弁護士プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2017年2月10日号

関連記事

トピックス

巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
人気格闘技イベント「Breaking Down」に出場した格闘家のキム・ジェフン容疑者(35)が関税法違反などの疑いで逮捕、送検されていた(本人SNSより)
《3.5キロの“金メダル”密輸》全身タトゥーの巨漢…“元ヤクザ格闘家”キムジェフン容疑者の意外な素顔、犯行2か月前には〈娘のために一生懸命生きないと〉投稿も
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン