◆水面下で派閥争い
実は、連盟の運営に疑問を抱く棋士は少なくない。1月23日に開かれた連盟から棋士への月例報告会では、今回の騒動への対応に、棋士側から批判が相次いだ。財テク棋士として知られる桐谷広人七段(67)はこういう。
「昔の連盟は棋士のことを一番に考えていましたが、今は違う。モチ代、氷代がなくなったりして浮いた金が、今回の第三者委の費用や三浦九段への補償で消えていくわけですから、全く無駄なことばかりやっている。そりゃ総辞職を求める声が出てくるのは当然ですよ」
ただ、西村九段の告発については首を傾げる。
「西村さんは米長会長体制を支えた人だが、連盟が今のようにおかしくなったのは米長会長時代からのことです。それまでは弱い棋士に救済を施し、将棋に精進できるようにしていた。それが理事の差配できる金ばかり増えた。現体制はその流れをくんでいる。
西村さんは月例報告会でも発言し、正論を述べていたと思います。ただ、今回は弟子である三浦をかばうという気持ちがもちろんあるのでしょうが、それに加えて前回の理事選で落ちたことが、現体制への批判につながっているんじゃないか」
そうした見方もあるなかで、西村九段が今回の騒動を経た5月の理事選で、再び理事に復帰しようと立候補する可能性はないのか。西村九段はこう答える。
「いやいや年齢的なこともありますから……。2年前は落ちましたが、過去には10期以上、一度も落ちたことがない。それ(=前回の落選)には色々なことがあったと思う。私は専務理事として米長前会長を支えてきましたが、棋士に対して厳しく対処してきたから恨まれている面がある。
理事選は敵も味方もいない候補者のほうが当選する。自分の言葉でものをいわない人のほうが有利。まあ今は5月の総会に向けて各派閥で理事候補者を探している状態。水面下の戦いでしょう」
会員である棋士たちから厳しい批判を現執行部はどう受け止めるのか。連盟に取材を申し込んだが、「回答は控える」(広報担当者)とするのみだった。内紛の様相を呈してきた将棋連盟。今回の騒動の本当のヤマ場はまだこの先にありそうだ。
※週刊ポスト2017年2月10日号