金融業界で〈事前に予想できない衝撃の大きな出来事が突然起きる〉ことを、「ブラック・スワン」と呼ぶ。かつて、オーストラリアで常識破りの“黒い白鳥”が発見されたことが、その語源となっているが、2017年の世界経済にも様々なブラック・スワンが予想されている。
主なものを挙げれば、中国人民元の「完全変動相場制」への移行、「プラザ合意」の再来、欧州各国の総選挙に伴う「EUの崩壊」、そしてトランプ大統領誕生で懸念される「米中貿易戦争」の脅威だ。
これらが今の世界経済に潜む「4大リスク」といえそうだが、もしそれが現実のものとなった場合、日本経済は乗り越えることができるのか──。
まず、人民元の完全変動相場制だが、もしそうなれば人民元が急落し、中国経済の悪化が世界経済に大きな影響を与えると予測されている。その日本経済への影響について、ニッセイ基礎研究所専務理事の櫨浩一氏(経済研究部エグゼクティブ・フェロー)は、こう分析する。
「そもそも完全変動相場制とは、経済学者が中国経済立て直しの処方箋として勧めている方法です。もちろんそれが実現すれば、一時的に人民元は大きく下落するかもしれませんが、為替レートを外国為替市場における需要と供給の関係にまかせて、自由化するほうが、中国にとってはいろいろな政策の縛りがなくなるため、経済はもっと安定するかもしれません。
中国景気はいまスローダウンしています。あえて言えば、フロート化にしてしまったほうが人民元の下落はあまり大きくならない可能性もありますし、かえって景気が安定して、日本も中国に輸出しやすくなるのではないでしょうか」