次に、「プラザ合意」の再来はどうか。1985年のプラザ合意では米国経済を立て直すために急速な円高誘導が実施されたが、それがドル高の進むトランプ政権下でも実施される可能性がある。ケイ・アセット代表・平野憲一氏がいう。
「第2のプラザ合意で円高に決められてしまえば、日本経済が厳しくなることは間違いありません。それを防ぐべく、大量の資金供給をもっと続けなければならなくなり、そうなるとバブルが発生します。実際、1985年のプラザ合意後に日本のバブルは始まりましたからね。
前のバブルは半分以上が土地で、残りが株でしたが、今の状況では対象の土地がないため、とんでもない株高バブルになる可能性があります。しかし、資金循環の流れからいえば、円高で金利が上昇すれば、それに対抗する資産運用、資産防御として、“とにかく株を買う”という流れになるかもしれませんし、強い円で海外の資産を買うこともできます」
櫨氏や平野氏は、ブラック・スワンが必ずしも日本経済に悪影響を及ぼすとは限らないとの意見だ。では、「EU崩壊」や「米中貿易戦争」が起きても日本経済は大丈夫といえるのだろうか。信州大学経法学部教授の真壁昭夫氏はこういう。
「EUショックでヨーロッパ経済が混乱すれば、もちろん日本経済にも影響が及ぶでしょうが、それを緩和するために安倍政権は財政政策を打ち、国内需要をさらに拡大させようとするでしょう。また、痛みを伴う労働市場などの構造改革を先送りにする可能性もあります。
しかも、日本はいま、アジア向けの輸出でドイツなどヨーロッパの国々と激しい競争をしています。EU崩壊で仮に欧州各国の経済が悪くなれば、アジアでの欧州シェアを日本が奪えるかもしれません」