『元気』が終わってからも、いろいろと気を遣ってもらったね。TBSの楽屋に、ある日大量のマグロの刺身が届いたこともあった。「松方さんが釣り上げたマグロです」ってね。そりゃ立派なもんで、腹一杯になっちまったよ。
オイラより4つ年上の松方さんは、まさに「兄貴」みたいなもんだよな。
「死んじゃうなんてまだ早いよ」って思うし、晩年の闘病もキツかったんだろうけど、いい時代を生きた人だったよ。
親父さんが近衛十四郎という名時代劇役者で、子供のころからお坊ちゃんで育ってさ。鯉がいっぱいいる京都のすごい豪邸に住んで、時代劇もヤクザ映画もドラマもバラエティ番組もぜんぶ当てて人気者になった人だよ。
女道楽もさんざんやってさ。あるオネエチャンのところに遊びに行ったら、いきなりその部屋に力道山が帰ってきて急いで隠れたなんて笑える修羅場の話も聞いたね。
とにかく太くて短い、松方さんらしい生き方だよね。勝新さんや萬屋錦之介さんに連なる系譜の人だよな。昭和がとっくに終わって、平成もそろそろ終わろうとしてるなかで、こういう破天荒で豪放磊落で、それでいて色気がある役者は、もう現われないのかもしれないよな。
ぜひ、松方さんには天国でも粋でいてほしいんだっての! ジャン、ジャン!
※週刊ポスト2017年2月10日号