経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、日銀・黒田総裁の心理状態を分析。
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先月末、“トランプ砲”が日本の為替政策にめがけて炸裂した。日本を円安誘導していると批判したのだ。安倍首相は、「批判は当たらない、適切な金融政策は日銀に委ねている」と発言した。
その日本銀行総裁は、“黒田バズーカ”で知られた黒田東彦氏だ。異次元の金融緩和を行い、市場の意表をつく“黒田バズーカ”を放って2%の物価安定目標に向かっていたが、思ったように物価は上昇せず、今や空砲だったのかと皮肉られている。
そこに“トランプ砲”が被弾。“黒田バズーカ”による大規模な金融緩和が、円安誘導の原因の可能性ではないかと衆院予算委員会で指摘されると、眉間にシワを寄せ、口をへの字にして固い不満気な表情で「物価安定のため」と説明した黒田総裁。
“トランプ砲”を迎え撃つ日本の金融政策の要、日銀の黒田総裁はトランプ新政権についてどう考えていたのか? 金融決定会合後の会見から、黒田総裁の心の内を見てみようと思う。
黒田総裁は、ちょっとタヌキっぽい顔にメガネをかけている。目つきは鋭く、じろりとにらんだ様子は気難しそうで怖い。七三に分けてなでつけた髪と黒っぽいスーツも、どこか重く冷徹な印象を与える。会見中は、面倒な質問に大きく舌打ちをして答えたりもしたが、笑いだしたら、身体をのけぞらせるように大笑いするほど表情は豊かだ。
この会見、やはりトランプ新政権が今後、リスク要因になるかどうかが注目された。
トランプ新政権について話し始めると、黒田総裁は口をへの字にしならがら「具体的な政策がはっきりしていない」とあごを何度かなでた。そして「どのくらい下方、上方リスクになるか」と言いながら、再びあごをなでたのだ。これは考え中の時によく見られる仕草の1つだ。ロダンの“考える人”でおなじみのポーズでもある。
トランプ新政権に対する黒田総裁のスタンスは、この仕草に表れている通りだ。今は動きを見て考えているが、まだ判断も決断もできない。その後も、「新政権の動きに注意する」と答えただけだった。
だが「トランプ新政権の米国第一主義の保護主義的な政策が、世界経済を縮小・減速させるのでは?」と問われると、「世界的には広がらない」と身体を前後させた。
人はストレスを感じると、そのストレスを緩和させるために、無意識に身体を動かすことは広く知られている。身体の揺れや上半身の動きは、肯定的であれば縦方向、つまり前後か上下、否定的であれば左右の横方向に動きやすいと言われる。
前後に身体を揺らしたということは、黒田総裁はトランプ政権の保護主義的政策に対するストレスは強いが、言葉通り、それが世界的に広がらないと考えているのだろう。