白内障手術で10年前にレースカットレンズを埋め込んだ患者
白内障手術後に視力が落ちた61歳の会社役員A氏を診療した深作医師は、「使用されていた眼内レンズはモールディングタイプだったうえ、後嚢の濁りも取っていなかった。非常に杜撰な手術を受けていました」と述懐する。
後発のメーカーはこうした欠陥を改良すべく、硬い素材を削り出す「レースカット法」で新たなタイプの眼内レンズを製造した。このタイプなら視界がクリアで10年以上使用してもレンズが濁ることは少なく、患者の視力が落ちる可能性はほぼないとされる。
だが、日本の眼科医の多くは現在も問題の多い「モールディングレンズ」を使用していると深作氏は指摘する。
「単焦点レンズだと、日本の医療制度では健康保険が適用されます。米国では高品質なレースカットレンズは一般的なレンズの2倍の値段を請求できるのですが、日本では保険診療上はどのレンズでも同じ診療報酬となる。より良い高価なレンズを使うと病院側の負担増になるのです。患者のために最高の視力結果を求めるなら、技術だけでなく最高のレンズを使うべきです」
さらに「深い闇」があると深作氏は指摘する。
「初期のモールディングレンズは、品質の悪さが祟って米国では使われなくなりました。そこで在庫を抱えたレンズメーカーは、日本の大学病院を中心に猛烈な営業攻勢を仕掛けた。いまだに日本の眼科で問題の多いモールディングタイプが使われているのは、その影響も考えられます」
まさに患者そっちのけの眼科医療だ。「誤った選択」を防ぐため患者に何ができるのか。いざ白内障と診断された場合確認すべきは、深作氏が強調する「医師の腕」だ。白内障の手術実績は「5000件以上」が目安となる。そのうえで、「眼内レンズの品質」もチェックする必要がある。
「手術を提案されたら、担当医に『レンズはどのタイプですか』と質問しましょう。レースカットなら比較的安心ですが、モールディングなら手術を考え直すべき。どのタイプか答えたがらない眼科医は論外です」