◆「政府専用機は出せない」
〈銃弾の嵐が鳴りやんだ時、私は身を潜めていた所からほんの数メートル先に銃を構える犯人を見ました。どれくらいの時間が経ったか解りませんが、居てもたっても居られなくなった私はそこを飛びだし妻を捜しました。見つけた時は妻はすでにこと切れており、最期の言葉も交わす事は叶いませんでした。妻の亡骸を3時間近く抱き続けるという異常な時間は正に地獄でした〉
万知代さんを失った悲しみに暮れる成沢さんと家族に追い討ちをかけたのは事件後の政府の対応だった。
日本政府は2013年1月のアルジェリア人質事件(邦人10人死亡)と昨年7月のダッカ・レストラン襲撃事件(邦人7人死亡)の際には、政府専用機を派遣して遺族を現地に送り、生存者と遺体を帰国させたが、その間に起きたチュニジア事件ではそうした対応もなかった。
〈息子が外務省の担当者に現地に行きたいので政府専用機の派遣をお願いすると、即答で「出せない」と言われ、「実費で数百万かかる」とも言われました(費用はツアーの保険で賄った)。
アルジェリアやダッカのケースでは遺族や遺体の搬送に政府専用機が使われ、ダッカの事件では外務大臣が空港で花束を手向け、ご遺体のご冥福を祈る姿がテレビで大きく報道されました。犠牲者を追悼するお別れ会が開かれて総理も出席しています。同じ海外でテロに遭い、一般人の自国民が殺された事件であるというのに、私たちの場合は国の被害者や遺族に対して真摯な対応は一切ありませんでした〉