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2017.03.02 11:00  週刊ポスト

海外テロ被害者「死んだ妻と私は日本政府に見捨てられた」

◆「補償はありません」

 事件で負傷した成沢さんは現地で数日間入院した後、旅行会社の手配で帰国し、成田空港で外務省の責任者と面会した。そのときに改めて湧き上がったのは外務省の安全情報への疑問だった。

 当時、外務省が公表している海外安全情報(渡航情報)では、チュニジアは危険度4段階の一番下のレベルに指定され、多くの旅行会社がツアーの対象にしていた。

〈成田空港で中山泰秀・外務副大臣(当時)と面会し、補償の事やケアの事などを協議しました。その時、副大臣は「成沢さんのご意向には100%に近い形で対応させて頂きます」とおっしゃって下さいました。そこで、「なんで渡航情報でチュニジアの危険度は大丈夫としていたのか」と尋ねると、副大臣は、あそこは日本企業が何社もあって危険レベルを上げてしまうと駐在員等が帰らなくてはならなくなるので、とおっしゃっていました。

 そんな対応で国民の安全、国民をテロから守ると言い切れる安倍首相や政府の認識が私には理解出来ませんでした〉

 補償について「100%対応する」という言葉にも憤りを感じているという。

〈その後、外務省の担当者が二人で自宅に来て開口一番「補償の法律はありません」と言われました。あとは何を言ってもその繰り返しでした。中山副大臣の「100%に近い形で対応します」という言葉に対して「それはないのだ」と訂正するために来たわけです。その後、外務大臣に会わせてほしいと文書を通じて何度か申し込みましたが全て却下されました。総理官邸にも電話で面会を求めましたがやはり駄目でした〉

 政府は昨年11月から「国外犯罪被害弔慰金等支給制度」を新設し、国外でテロなど犯罪行為に巻き込まれて不慮の死を遂げた犠牲者の遺族に200万円の弔慰金(障害は100万円の見舞金)が給付されることになった。昨年7月のダッカ・レストラン襲撃事件の犠牲者には、制度を“前倒し”する形で200万円の政府弔慰金が支払われたが、チュニジア事件の被害者は対象外だった。

 成沢さんは手記の中でこう指摘している。

〈話し相手の居なくなった部屋で一日を過ごす事は押し寄せる孤独感とため息の連続でありこれは正に拷問です。外から帰って玄関の前に立った時、鍵を開ける事すらためらってしまう。玄関を開けても誰もいない絶望感。「遺族という名の鎖」それも鍵のない鎖に繋がれてしまった感じです〉

〈他の海外先進諸国はテロ被害者に対して手厚い法律を作って被害者を救済する制度を設けています。総理は他の先進諸国と足並みを揃えてとたびたび口にしますが足並みを揃えていないのは日本だけです〉

「テロと戦う」と言う安倍首相の覚悟が試されている。

※週刊ポスト2017年3月10日号

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