芸能

松方弘樹が語った、アクの強い悪役俳優がなぜいなくなったか

松方さんは日本の映画や時代劇の現状を心配していた

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、2017年1月21日に脳リンパ腫で亡くなった、故・松方弘樹さんが語った、日本の映画やドラマなどの現状についての言葉をお届けする。

 * * *
 先日亡くなった松方弘樹には、本連載だけでなく本誌での対談にもご登場いただいた。先週に引き続き、今回はその時の模様を振り返っていきたい。

 対談の終盤は主に日本の映画や時代劇の現状についての話題になった。その際、松方はさまざまな視点で昔からの状況の変化を語り、そして嘆いていた。中でも、アクの強い悪役俳優が不在になっていることに触れ、それが出てこない背景を語ってくださっている。

「俳優がみんな、いい人になっちゃってる。テレビに出て、好々爺になっちゃった。まあ、生活もあるでしょうし。今は、俳優だけじゃ飯が食えないんです。

 映画の本数もそんなに多くないですから。それで仇役でイイ味がある役者でも、バラエティ番組に出ると悪としてのリアリティが無くなってしまう。そうなると、プロデューサーとしてもキャスティングしにくくなる。テレビのバラエティ番組での土俵は広がっても、アクターという土俵は縮まっていきます。だから、難しいところです。石橋の蓮ちゃん(蓮司)くらいの域のバイプレーヤーは、もうおらんですよ。いい俳優はどんどん少なくなっていく。

 僕も悪役やりたいですよ。たしかに、主役よりも敵役や脇役の方が芝居は面白くできるんです。そういうのをやらせてくれるといいんだけどね──。

 ところが、テレビだと70歳といったらクソジジイと思われて、使わないんですよ。僕のやりたい役はみんな、50くらいの人がやっています。滑舌が良かろうが悪かろうが、体が健康だろうが病気だろうが、この歳になったら、もうキャスティングの候補ですらない」

 松方が終始指摘していたのは、俳優そのものの資質ではなく、映画、芸能界のシステムのあり方についての問題だった。現在のやり方ではいい役者は育たないし、優れた映画も生まれない。松方の言葉は、激しかった。

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン