54才の主婦・後藤菜摘さん(仮名)は昨年12月、北海道に進学した娘の下宿先に遊びに行った。娘と一緒に地元で有名なシーフードカレーを食べ、下宿先に歩いて戻ったその1時間後のこと。後藤さんの体に突然、異変が起こる。
「首のあたりに違和感を覚えて鏡を見ると、じんましんが出て真っ赤になっていたんです。“急に暖かい部屋に入ったから?”と思って薬箱を探しているうちに、口の中が腫れているような感じがしてきました。病院に行った方がいいかと思って娘の部屋を出て、ひとりでエレベーターに乗り込んだところで急に気持ちが悪くなり、1階に着いた時には体が動かなくなっていました」(後藤さん)
なんとか部屋にいる娘に電話をかけ、タクシーを呼んでもらって病院へ。診察した医師にこう告げられた。
「典型的なアナフィラキシーショックです。それも重篤な状態です」
まさか自分が…後藤さんは意識が遠のく中、注射、点滴などの治療を受け、入院はしなかったものの、娘の部屋で1日安静にして過ごした。後藤さんはこう振り返る。
「それまでアレルギーとは無縁だったので、本当に驚きました。診断では何が原因かははっきりわからず、おそらく海鮮だろうということでした。シーフードカレーに入っていたのは、えびやムール貝、かき、ほたて。どれもこれまでは平気で食べていたのに…」
アナフィラキシーショックとは、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を体内に取り込んだ後に出る症状で、咳やじんましんのほか、呼吸困難や意識消失などを引き起こし、最悪の場合、命を落とすことさえある。食物アレルギーの場合、即時型と非即時型の2つのタイプがあるが、ほとんどは原因となる食べ物を食べてから主に2時間以内に症状が出る即時型だ。
「あの時、もし娘と一緒じゃなかったらと思うと本当にゾッとします。魚介類はもう食べないようにしていますが、外食の料理の中に材料として入っているのを気づかずに食べてしまったら、と思うと不安でなりません」(後藤さん)
アレルギーといえば、アトピー性皮膚炎やぜんそく、食物アレルギーなど、子供のものというイメージがいまだ強いが、後藤さんのように大人になってから発症する人や、子供の頃のアレルギーが大人になっても治らない人が実は増えている。