東京都議選は定数127を「1人区」から「8人区」まで42の選挙区に分けて行なわれる。

 小池新党「都民ファーストの会」は単独過半数を目標に「70人以上の候補者擁立を目指す」(小池側近)と号令をかけているが、3月8日現在、公認候補はまだ15人しか決まっていない。それに対して迎え撃つ自民はじめ既成政党の候補たちは現職、元職、新人ともに印刷所に政策チラシの発注を始めるなどすでに臨戦態勢に入った。

 個別の選挙区情勢を見ると有権者の変化がはっきり現われている。

【北区】(定数3)
自民大物が落選の瀬戸際

 いま「日本で最も注目されている選挙区」が東京都「北区」(定数3)だ。小池新党の“スポークスマン役”の音喜多駿・都議と、引退を表明した“都議会のドン”内田茂・都議の側近で反小池の急先鋒である高木啓・都議会自民党幹事長が正面からぶつかる。そのうえ衆院選では太田昭宏・前公明党代表の地元(東京12区)だけに、公明党にとっても絶対に落とせない選挙区となっている。

 前回都議選では自民の高木氏がトップ当選、公明が2位につけ、3位・共産、音喜多氏は最下位の4位で当選した。今回は定数3に削減されたとはいえ、国政の「安倍一強」状態からみて、通常なら前回トップ当選の自民党の大物都議が3位までに入ることができずに落選するという事態は考えにくい。

 ところが、有権者の投票行動に大異変が起きていた。昨年の都知事選および参院選の各党得票をベースに、本誌独自の現地取材による情勢分析を加えて会派別の獲得議席をシミュレーションした結果、北区は都民ファーストの会の音喜多氏と共産、公明の議席獲得が有力で、自民・高木氏は落選の危機に陥っている。自民党東京都連の選挙スタッフの証言がわかりやすい。

「音喜多は去年まで定数減の北区では勝てないと判断して、他の選挙区に移ることを検討していた。ところが、今年に入ると小池旋風で風向きが一変した。自民党支持の業界団体や商店会の新年会では、これまで相手にされていなかった音喜多におばさんたちが集まって小池都政の話を聞くなどたいへんな人気。

 票の分析をすると、自民票の6割以上が音喜多に食われる可能性が高い。そこまで票を削られると高木さんは固い基礎票を持つ公明、共産の候補にも抜かれ、4位で落選することになる」

 都民ファーストの会内部からは、「音喜多は無党派層に強いからすでに当選圏だ。高木幹事長を確実に落選に追い込むには、自民党票をもっと奪える保守系の2人目の刺客候補を立てる選択もある」という強気な声があがっている。

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