ファン獲得のために日夜奮闘するアイドルたち。地下アイドルだけでなく、人気アイドルもまた、日々、握手会や撮影会を開催し、ファンサービスに余念がない。しかし、こうした“営業活動”を行っているのはアイドルだけではない。
なかでもその過剰な営業が話題となっているのが、ビジュアル系(以下V系)バンドシーンだ。昨今、全盛期に比べてシーン全体が低迷期にあるV系業界では、ファンを獲得するために行うインストアイベントの内容が過激化しているという。V系バンドのファンである女性・Aさん(23歳)は、過剰営業の実態について、こう語る。
「若手のV系バンドマンは、昔から“貢ぎ”(ファンからの経済的支援)と“色恋”(肉体関係をもった営業)は基本でした。最近では、よりファンに媚びるようになったので、インストアイベントで恋愛感情を刺激してファンをつなぎとめているバンドも多い。
武道館ライブをやった経験もある某バンドでは、同じ楽曲が収録された複数タイプのCDを販売し、そのうち3タイプ以上購入した人はハグ会やハイタッチ会に参加できる、という企画をやっています。ハグだけならまだ良い方で、後ろから抱きつく、お膝に乗る、キス会、頭ぽんぽん、壁ドンなどなんでもありです。ファンもそれを喜んでいるのでなんとも言えませんが、完全にセクハラが横行する世界です」(Aさん)
もちろんすべてのV系バンドが過剰営業をしているわけではなく、こうした風潮に対して不快感を示す硬派なバンドマンも少なくない。V系シーンで10年ほど活動している某中堅バンドのメンバーは、こう憤る。
「シーンが停滞しているから生き残りのための過剰営業をせざるを得ない、という意見もあるかもしれませんが、真面目に音楽をやっている側からすると、こういうバンドのせいでシーンが腐って停滞したんだと思います。CDが売れないのはどのジャンルも同じで、音源配信やライブ活動に注力すればそれを補える。売れないからといって、恋愛感情を利用してファンを増やそう、というのは音楽人として本末転等です。
残念ながら、こういった営業にかまけているバンドは、総じて歌唱力も演奏力も低いことが多い。そんなことをする暇があったら自分たちの実力をつけることに集中すべき。放っておいてもいずれ消えると思いますが、シーン全体の印象を悪くするような振る舞いは迷惑だからやめてほしい」
バンド活動を続けていれば、ファンと交流する機会は避けて通れないだろう。ただ、自身の心ない振る舞いがシーン全体の印象を左右する可能性があるという緊張感をもって欲しいものだ。