「過激化に歯止めが効かない業界の現状を、当局もついに見過ごせなくなったという事でしょう。我が社からデビューしたAV女優も“金になるから”ということで裏作品に出るようになって、正規のAV業界から姿を消しました。ある意味、まともにAVを作ろうと思っても無理な状況になっています。しかし、手っ取り早く金になる以上は、違法な裏作品は次々に作られてゆくので、無秩序化は止まらないでしょう」
前述の男優・A氏は、制作会社幹部が予想した無秩序化は、ごく最近ではなく、しばらく前から水面下で進行していた事象だと断言する。
「知人のAV関係者は、風俗嬢やナンパした女性に一定の金額を手渡し、20分程度の無修正シーンを収めた動画をネットで販売しています。まともにAVを作るより儲かるというのですが、そこに目をつけた素人の方が、同じように動画を販売しています。出演者が未成年だったり盗撮映像だったりと、無修正であるだけでなく、様々な犯罪を犯しているといえる動画が多く出回っています」
アダルトビデオにまつわる規制については、以前から”時代に合っていない”と指摘の声が上がっている。何十年も前のわいせつ基準をそのまま適用しているからだ。
わいせつ基準は社会や文化によってまちまちで、法律も国ごとにことなる。ところが、今ではインターネットを利用すれば、簡単に国境を超えて異なるわいせつ基準のものを閲覧できる。そういったネットの隙間を利用した、各々の勝手な脱法的な解釈を根拠に作られた様々な映像作品は、たった今も誰でも鑑賞できるのが現実だ。そういった現実に法律が追いついておらず、いま現在“無修正がなぜダメなのか”といった表現方法についての議論もなされているが、有効と思われる解決策が呈示されているわけでもない。
結果として、法律や取り締まり基準だけが古いまま現実が進み、その現実にあわせるため違法な表現を選択する者が後を絶たない。可能な表現方法や販売方法について模索し、安定した収入を得られる何らかの新しい手法が可能になれば、彼らのほとんどは法律に違反する行為に手を染めることはないだろう。しかし、このまま混乱が続くようであれば、制作サイドが逮捕されるだけではなく、女性や子供を巻き込んだ、新たな形の性犯罪が起こる日も、そう遠くないのではないかと思わずにはいられない。