もちろん、豊洲市場を「経営体」と見れば、ツッコミどころは少なくない。高機能の低温管理施設や空調設備を盛り込みすぎたために整備費は約6000億円上っており、開場後の減価償却費が収支を圧迫する。築地市場の売却益で補うとしても、減価償却を除いてすら赤字が見込まれる収支計画では、将来都民にツケが回る可能性は確かにある。
しかも水産物取扱量は15年前と比べ3割も減っている実態は深刻だ。高齢化して担い手もいない零細の仲卸業者に廃業が進めば、施設利用料を原資とした市場の収支はさらに悪化するだろう。小池知事の言い振りは一見、もっともらしく見える。
だが、ちょっと待ってほしい。これと移転判断の先送りは全くの別の問題ではないか。高コストが問題ならば移転を進めながら「コスト削減計画」や「物流戦略プラン」づくりに着手すればよい。築地にいて卸売市場の右肩下がりをストップさせることは不可能だからだ。
小池知事は「豊洲リスク」ばかりを強調するが、そもそも移転が必要なのは「築地のリスク」が窮まっているからだ。築地の建物は耐震性を満たしておらず、大量のネズミが生息し、温度管理もできない。つまり、生鮮食品を扱う市場としてもはや適さないことは誰の目にも明らかなのだ。
「現在営業しているから築地は安全」などとはぐらかして、ご都合主義で情報発信を歪める小池知事の姿勢は、「フェイクニュース」そのものである。